【9月19日 AFP】過去37年間、モハメド・ファナス(Mohammed Fannas)さんが叩く太鼓「タンブール」は、イスラム教の断食月「ラマダン(Ramadan)」の間、レバノン南部の港町シドン(Sidon)の人々を目覚めさせてきた。

 ラマダン中、断食が始まる日の出前にとる食事「ソフール(sohur)」の時間になると、人々を起こして回る「メサハラティ」。15歳からこの仕事を続けているファナスさんは、今、携帯電話のテキストメッセージなど現代ツールの出現により、自分が「絶滅危惧種になりつつある」と感じている。

 メサハラティの仕事をするときは、伝統的なローブに着替え、タンブールとランタンをさげて夜明け前の旧市街に出る。ランタンは、レバノンでは頻発する停電の際に足元を照らしてくれるだけでなく、伝統や温かみも感じさせてくれる「旧友」だという。

「起きなさい、起きなさい、神の名前を唱えなさい」と、タンブールのリズムに合わせて歌いながら、家々の間を通り過ぎる。個人の名前を付け加えることもある。「アブ・モハメド、アジズ、起きなさい!」

 だが、スピーカーから録音テープを流しながら車を走らせたり、テキストメッセージを使ったりする「当世風の」メサハラティも登場しつつある。「そうした方法では、1分間に100人を起こすことができ、メサハラティも疲れることはありません。でも、よそよそしいと感じます。わたしはこの40年間培ってきた今のやり方の方が好きだし、一定の年代の人にも好まれています」とファナスさん。

 ファナスさんは、ラマダン最後の夜には、小さな楽団を引き連れてラマダンへの別れを告げる歌を歌い、家々を回って「期間中の報酬」としての果物などを受け取る。決まった額はなく、「心づけ」なのだという。メサハラティの中には、特定の宗教団体がスポンサーとしてつき、あらかじめ報酬を決められる場合があるという。ファナスさんは「そうしたメサハラティが、報酬をユーロで支払うよう要求し始めたとしても、わたしは驚きませんよ」と冗談を言った。

 ラマダンが終わると、タンブールやランタンを部屋の隅にしまい、カフェで働いたり、チャリティーイベントで歌ったりしているというファナスさん。「でも、わたしの職業はあくまでも、メサハラティです」。(c)AFP/Mahmoud Zayyat