【9月18日 AFP】(写真追加)国連食糧農業機関(United Nations Food and Agriculture OrganisationFAO)は17日、世界各地で深刻な飢餓に苦しんでいる人の数が、食糧価格の高騰を受け、2008年初めまでに8億5000万人から9億2500万人に増加したことを明らかにした。

 イタリアの通信社ANSAによると、FAOのジャック・ディウフ(Jacques Diouf)事務局長はイタリア議会の委員会で「栄養失調状態にある人の数は、食糧価格の高騰が深刻化する以前の07年だけで7500万人も増加した」と語った。

 FAOの統計によると、食糧価格は06年に12%、07年には24%上昇しており、08年は8月までだけで50%も上昇しているという。ディウフ事務局長は、飢餓に苦しむ人の数は今年末までに10億人を超えるとの見方を示した。

 ディウフ事務局長は「食糧生産を倍増させ飢餓をなくすためには、年間300億ドル(約3兆1500億円)の投資が必要だ」と強調し、この投資額は、各国が軍事費や農業に支出する金額に比べると「ささやかなものだ」と述べた。

 6月にイタリア・ローマ(Rome)で行われた、FAO主催の食糧サミットでは、世界各地の飢餓を2015年までに半減させるとともに、食糧危機に対して「緊急」行動を行うことを盛り込んだ宣言が採択された。また、約65億ドル(約6900億円)の支援も約束されていた。

 だが、この宣言は1996年や2002年の食糧サミットで発表されたものの焼き直しにすぎず、ディウフ事務局長も「現在の動向では」飢餓の半減目標も、2015年ではなく2150年になるとの見通しを示した。

 世界銀行(World Bank)の試算によると、食糧価格の高騰により、1億人が貧困ライン以下の生活水準に追いやられてしまったという。また、世界各地では、食糧価格の高騰に抗議するデモや暴動が発生するとともに世界経済の景気動向にまで影響を及ぼしかねない状況となっている。

 専門家は食糧価格の高騰の要因として、原油価格の高騰やバイオ燃料の利用拡大、新興国で食肉などの高カロリー食品の消費が増加していることなどを挙げている。(c)AFP