【9月15日 AFP】アジア諸国への旅行者がかつて格安で購入した美術品が、数千万円のお宝に大変身――。今週ニューヨーク(New York)で、そして12月に香港(Hong Kong)で開催されるアジア美術品のオークションでは、そんな光景を次々と目にすることになりそうだ。

 競売大手のクリスティーズ(Christie's)とサザビーズ(Sotheby's)は今週と12月に、古代中国の陶器から現代の芸術作品まで、さまざまなアジア美術品のオークションを開催する。

■40年前20ドルだった油彩画が50万ドル落札の予測

 注目作の1つは、韓国の代表的な現代画家、朴壽根(Park Sookeun)氏が1964年に描いた小さな油彩画『Figures in a Landscape』。18日にクリスティーズのオークションに出品されるこの絵画は、1960年代にソウル(Seoul)を訪れた米国の旅行者がわずか20ドル(約2100円)で購入したものだ。クリスティーズはこの油彩画の落札額を40-50万ドル(約4200-5300万円)と予想している。

 購入者はその価値を知らず、40年間自宅に保管し、最近まで7歳になる少女の寝室の壁に掛けられていたという。

 クリスティーズの担当者Heakyum Kim氏は、「韓国の美術品は、日本や中国、インドのものほどよく知られていないが、認知度は上がってきている」として、70万ドル(約7400円)まで上がることを期待していると語る。

 Kim氏によれば、1950-60年代に韓国を訪れた米国人は旅行の記念品を選ぶのに困ったが、そんな時に10-15ドル(約1000-1600円)程度で手軽に購入できたのが、こうした美術品だったのではないかという。

■喜多川歌麿の美人画、中国の陶器にも注目

 18日の出品作の中でもうひとつの目玉は、18世紀に活躍した浮世絵師、喜多川歌麿(Kitagawa Utamaro)の『歌撰恋之部 物思恋(ものおもうこい)』だ。予想落札額は150万ドル(約1億6000万円)。クリスティーズの山口桂氏は「ピカソの版画は既に1億円を超えているが、それに比肩するものと判断した」と話す。

 最も有名なアジア美術のひとつ、中国の陶器も多数出品される。クリスティーズは今週と12月のオークションで、陶器だけの落札額で2200-2800万ドル(約23億-29億5000万円)に達するとみている。

 注目を集めているのは、60-80万ドル(約6300-8400万円)の明代初期の陶器と、チョウが描かれた清代の陶器(価格非公開)だ。そのほか、仏像、日本の屏風、インドのタンカと呼ばれる仏画などアジアの伝統美術が、15日から17日までクリスティーズのオークションに出品される。

■急成長するインド現代美術作品も登場

 クリスティーズのYamini Mehta氏が、「急成長中で価格も上昇している」というインドの現代美術界からは、Subodh Gupta氏の作品が出品される。この作品は巨大なハート形の枠の中にステンレスのカップやポットなどを詰め込んだもので、落札額は60-80万(約6300-8400万円)と予想されている。

 インドからのもう一つの注目作は、Tyeb Mehta氏の絵画『Falling figure with Bird』だ。悪夢を表現したかのようなこの作品は、100-150万ドル(約1億-1億6000万円)の値を付けるとみられている。

 中国の楊詰蒼(Yang Jiechang)氏の作品『Eye of the Storm』も斬新さでは負けていない。中国の森を描いた絵の前に枯れ木を並べたこの作品は、17日にサザビーズのオークションで、40-60万ドル(約4200-6300万円)で落札されると予想されている。(c)AFP