【8月23日 AFP】ロシア政府は22日、グルジアからの軍部隊の撤退を完了したと発表した。

 ロシア政府は声明で、同国部隊の撤退は無事に22日午後7時50分(日本時間23日午前零時50分)に予定通り完了し、フランスが仲介した和平原則に定められたロシア側の義務を履行したとのアナトーリー・セルジュコフ(Anatoly Serdyukov)国防相の談話を発表した。

 一方、グルジア内務省のShota Utiashvili報道官は、ロシアはグルジア国内の複数の地域の占領を継続しており、撤退は完了していないと述べた。

 ロシア軍部隊と戦車がグルジア領から撤退し、南オセチア(South Ossetia)共和国に近いグルジアの都市ゴリ(Gori)を再びグルジア警察が管理できるようになった。しかし、戦略的に重要な道路の占領は続き、南オセチア自治州周辺の緩衝地帯には約500人の「平和維持部隊」が残る見込みだ。

■米仏の反応

 米国政府は、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領とフランスのニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領が電話で会談し、ロシアは(和平原則を)順守しておらず、順守する必要があると合意したことを明らかにした。またフランス大統領府の声明によれば、両大統領は共同でロシアに対し、グルジアからの撤退を継続して完了させるよう呼びかけた。

 8月8日にグルジア軍の攻撃を受けた南オセチアを守るため軍事介入したロシア軍は現在、ロシアに向かって北上している。グルジア領内の陣地から南オセチアおよび、同じくグルジアからの分離独立を目指すアブハジア(Abkhazia)自治共和国に向けて数百人規模の兵士と多数の戦車やトラックが北に移動する様子が見られた。

■緊張が続く国際関係

 ロシア軍の撤退にもかかわらず、国際的な緊張は和らいでいない。

 ロシアは北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty OrganisationNATO)の黒海(Black Sea)での海軍演習を非難し、国連(UN)は、今回の紛争に関する決議案について合意できていない。

 アナトーリー・ノゴヴィツィン(Anatoly Nogovitsyn)副参謀長は、記者団に約500人のロシアの「平和維持部隊」の「担当地域」の地図を公開した。これにはグルジアの首都トビリシ(Tbilisi)と黒海を結ぶ主要な幹線道路が含まれるという。さらに軍事拠点が港湾都市ポチ(Poti)郊外に置かれ、ポチとセナキ(Senaki)を結ぶ道路の任意の場所に部隊を展開させる権利を持つうえ、必要に応じて増派する権利も留保するという。

 西側各国はNATO加盟を目指すグルジアを支援する姿勢をみせてきた。米国防総省によれば、米国の誘導ミサイル駆逐艦1隻がこの週末黒海に向かい、グルジアに大量の援助物資を運ぶ予定になっている。NATOはロシアの軍事介入を非難したが、それに対してロシアはNATOとの協力を凍結した。NATOが演習のため黒海に艦船を送るとロシアはこれを批判した。NATOは、米国、ドイツ、スペイン、ポーランドの艦船が参加するこの演習は通常のもので、グルジア紛争勃発(ぼっぱつ)の前に計画されていたと説明している。

 戦車をはじめとする重火器とともに南オセチアとアブハジアに展開しているとみられる数千人規模のロシアの兵力が完全に撤退する時期も依然として不透明だ。最近の情勢からすると、グルジアが両地域の支配を回復できる見込みはますます低くなりつつある。

 一方のロシアは、南オセチア・アブハジア両地域を承認するのか明確なシグナルを出していない。仮に承認すれば、冷戦終結後に西側諸国との間に起きた最悪の危機を悪化させることになるだろう。ロシアの上下院は25日、この問題について審議する。

■人道援助

 アントニオ・グテレス( Antonio Guterres)国連難民高等弁務官(UN High Commissioner for Refugees)は22日、人道的な状況を調べるため南オセチア入りした。国連難民高等弁務官事務所(Office of UN High Commissioner for RefugeesUNHCR)は、グルジアの中部と西部で約2万5000人以上が援助を必要としているとみている。22日には、ゴリから毛布やテント、燃料タンクなどの援助物資がトラックで送り出された。(c)AFP/Michael Mainville