【8月15日 AFP】米国人研究者が率いる考古学者チームは14日、ニジェールのサハラ砂漠(Sahara Desert)で恐竜の化石を探索中、石器時代の発見で過去最大級と思われるヒトや動物の遺骸(いがい)の埋葬地を偶然発見したと発表した。

 発見したのはシカゴ大学(University of Chicago)の古生物学者ポール・セレノ(Paul Sereno)氏率いる研究チームで、米「ナショナルジオグラフィック(National Geographic)」誌9月号で発表された。

Gobero」と名付けられたこの遺跡は、遊牧民トゥアレグの言葉で「砂漠の中の砂漠」を意味する「テネレ( Tenere)」と呼ばれるサハラ砂漠の一帯にある。この埋葬地からは、完全にそろったままの希少な人骨のほか、約1万年前の魚やワニの骨も見つかった。約8000年前から1万年前までは周辺は湿地帯だったと考えられている。

■1000年を隔て2つの人種が存在

 この遺跡には、1000年以上を隔てて2つの異なる人種が存在していた痕跡が残されていた。人骨はサハラ砂漠の熱風に吹かれ、広範囲に散らばっていたという。

 研究チームの1人、アリゾナ州立大学(Arizona State University)の生物考古学者Chris Stojanowski氏が、骨や歯について放射性炭素年代測定を行った結果、2つの人種は1000年差で同じ湖畔に住んでいたことも明らかとなった。

 Stojanowski氏は「一目見ただけでは、生物学的に異なる2つの人種が、同じ場所に遺体を埋めたとは想像しにくい」と語る。「最大の謎は、1つの墓もかち合うことなく、このようなことがどうして成しえたかだ」という。

■遺跡はこれまで未発見だったと確信

 チームをくぎ付けにしたのは、ある1つの発見だ。約5000年前の小柄な女性の骨が、2人の幼い子どもの遺骸と向かい合い、抱きしめるように腕が伸びていたという。

 また、地下から掘り起こされた骨の一部からは花粉が見つかった。チームは、敷き詰められた花の上に死者が埋葬された証拠だという。ほかにも、歯がほぼ完全に残っている人間のアゴの骨や、指がすべてそろった小さな手の骨が砂から突き出た形で発見された。これら人骨に加え、銛(もり)の先や石器、また首飾りを作るための小さな穴の開いた装飾品なども見つかっている。

 これらの遺骸が埋葬当時の状態そのままに発見されたことから、チームはこの遺跡がこれまで完全に未発見だったと確信している。

■恐竜の化石も出土

 セレノ氏は「どこを掘っても砂漠に生息しない動物の骨があった。それで、われわれの位置は、かつて緑地帯だったサハラなのだと気付いた」という。

 巨大なワニや恐竜の化石も出土している。約1億1000万年前の白亜紀に生息していた史上最大のワニの1種「サルコスクス・インペラトル」の頭蓋骨も完全な状態で見つかった。500本の歯と巨大なアゴを持つやはり白亜紀の草食竜ニジェールサウルスの化石も出土している。(c)AFP/Jean-Louis Santini