【8月12日 AFP】セネガルの村人たちに、健康に良いと重宝がられてきたバオバブの実。この魅力に欧州が気付き始めた。欧州は前月、バオバブの実の輸入を初めて許可。村人たちも、その恩恵にあずかろうとしている。

「命の木」とも称されるバオバブは、アフリカ大陸のサバンナに太古から存在する木だ。さかさまに植えたように見えるために「さかさまの木」とも呼ばれる。

■干ばつや洪水にも強い木、化粧品や健康食品の原料に

 地元の人々は、バオバブの木を余すところなく使用する。種はクッキングオイルに、樹皮はロープになる。実は腹痛に、葉は疲労回復に効くとされる。昔は、空洞になっているバオバブの幹にグリオ(吟遊詩人)を埋葬していたという。

 バオバブの実は、オレンジの3倍のビタミンC、コップ1杯の牛乳よりも多くのカルシウムが含まれているとされる。しかも、バオバブの木は乾燥に強く、干ばつにも洪水にも耐え、耐火性もある。

 Fandene村に住む農民たちは、バオバブの実を近くの町の市場で売っていたが、3年前から「Baobab Fruit Company」に売るようになった。3人のイタリア人が経営する同社は、同国唯一のバオバブの実の加工会社で、乾燥させた実を化粧品や健康補助食品用として輸出している。

■新たな収入源で、貧困地域の生活に変化

 こうした新たな収入で、村人たちの生活には変化が見え始めている。ある村人は、「おかげさまで子どもたちを学校にやることができた」と語った。

 フェアトレードと環境的に持続可能な天然産物の開発を目指すNGO「PhytoTrade Africa」は、2006年以来、EUに対し、バオバブの実の輸入を認めるよう働きかけてきた。その努力が前月、実を結んだ。

「欧州が輸入を許可したことは、アフリカにとってすばらしいニュース。欧州に市場が開かれることで、貧困地域に生活を一新させるような収入がもたらされるだろう」と、同団体のシリル・ロンバード(Cyril Lombard)氏は言う。同団体は、貿易額は年間で10億ドル規模にのぼると試算している。

■バオバブは絶滅する?

 先述のBaobab Fruit Companyによると、欧州からの引き合いはうなぎ昇りに増えており、現在の年間収穫量150-200トンを大幅に増やす必要がありそうだという。

 その一方で、一部の環境保護活動家は、こうした商業的な搾取がバオバブの絶滅を招くとの危惧を抱いている。

 Baobab Fruit Companyは「木を損なわないよう、実と葉だけを採取している。バオバブが貴重な収入源になったら、農民たちも木を保護する必要性を認識するようになるだろう」と話している。(c)AFP/Stephanie van den Berg