【7月29日 AFP】英国文学界最高賞とされるブッカー賞(Booker Prize)の創設40周年を記念する「ベスト・オブ・ブッカー(Best of Booker)賞」を10日に受賞した作家サルマン・ラシュディ(Salman Rushdie)氏(61)は、28日に放映された英BBCのインタビューで「イランの故ホメイニ師(Ruhollah Khomeini)に死刑を宣告された後の潜伏生活に関する本をいつか書くだろう」と語った。

 身辺の安全について聞かれたラシュディ氏は「危険はもう長いこと感じていない」と答えた。「(死刑宣告から)9年間はきつい時代だった。それからまた9年が経過した。最初の9年間は『前章』、そしてこれまでの9年間は『新しい章』だったように感じる」 

 その「きつい時代」に関して本を書く予定はあるかとの質問には「あの頃は、ただ問題と格闘し、何とか乗り越えようと必死だった。今では、伝えるべき物語があると思っている。私にそれを書くよう、大勢の人が励ましてくれている。いつの日か書くかもしれない」と語った。

 ラシュディ氏はインド生まれの英国人作家。イスラム教スンニ派(Sunni)の家庭で育った。著書『悪魔の詩(The Satanic Verses)』(1988)について、故ホメイニ師が1989年、「イスラム教を冒とくした」と非難、宗教令ファトワとしてラシュディ氏に死刑を宣告した。以後約10年間、ラシュディ氏は潜伏生活を余儀なくされた。

 07年6月に英国のナイトの爵位授与が発表された際には、世界中のイスラム国や教徒らがこれを非難し、抗議が発生した。パキスタンのある閣僚は、同氏への自爆攻撃が発生しても正当化されると発言し、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)ナンバー2のアイマン・ザワヒリ(Ayman al-Zawahiri)容疑者は、英国への「報復攻撃」を警告。イラン政府も、ラシュディ氏への死刑宣告は撤回されていないことを改めて強調した。

 ラシュディ氏は最近では公に姿を見せることが増え、国際的な社交の場にもよく出席している。(c)AFP