【7月17日 AFP】スイス・ジュネーブ(Geneva)で12日から5日間の日程で開催されている欧州神経科学連合学会(Federation of European Neuroscience SocietiesFENS)主催のフォーラムで15日、フランスの研究チームがまだ動物実験の段階ではあるものの、ハンチントン病の遺伝子治療の有効性を示した。

 ハンチントン病はおよそ1万人に1人の割合で発症する神経系疾患で、主に30-50代で発症する。10-20年かけて症状が進行し、けいれんなどの不随意運動や、人格変化や認知症を引き起こす。死に至る場合もある。

 この病気は 第4染色体にある「IT15」と呼ばれる1つの遺伝子の損傷が原因で、ハンチンチン(huntingtin)と呼ばれるタンパク質に変異を引き起こし、それが過剰に活性化すると大脳基底核の線条体の細胞を殺してしまう。

 フランス原子力庁(Atomic Energy CommissionCEA)の生物医学イメージング・分子イメージング研究所(Institute of Biomedical Imaging and Molecular Imaging Research Centre)の研究チームは、改変したウイルスを使って矯正した遺伝子を脳細胞に送り込み、ハンチントンの影響を防ぐ天然のシールドを強化する実験を行った。

 送り込まれた神経保護分子は、毛様体神経栄養因子(ciliary neurotrophic factorCNTF)と呼ばれる。脳に障害や損傷が起きた場合、CNTF合成が促進されて神経細胞の生存を助けるが、研究チームが線条体に送り込んだウイルスは、このCNTFを作る遺伝子を脳細胞に感染させるものだ。

 研究チームはまずモルモットで、その後霊長類で実験した結果、この手法で線条体の細胞を保護できることが判明。今後は、ヒトでの臨床実験を行っていくという。

 遺伝子治療は、医療研究において最も興味深い分野の1つで、米国や英国でも同様の研究が進められている。欠陥のある遺伝子を修正することにより、病気の進行を遅らせるまたは止めたり、さらには完治も期待できる。

 一方、動物実験では成功したものの、臨床ではうまく行かない場合も多く、一進一退を続けている。臨床実験には新しい治療法の安全性を確認するためにさまざまな条件が課されるため、非常に長い時間がかかる。(c)AFP