【7月10日 AFP】北海道洞爺湖サミット(G8 Hokkaido Toyako Summit)は9日、1次産品価格の高騰に強い懸念を表明したものの、神経質な市場に対する応急策は無いままに閉幕した。

 アナリストらは、サミットの成果について、インフレ圧力を高め世界経済の成長にとって脅威となっている原油価格の急騰に対して、主要8か国(G8)が対抗策を打ち出すだけの実行力を欠いている実態を反映したものとなったとみている。

 G8首脳は、原油と食糧価格の上昇と世界的なインフレ圧力の高まりに「強い懸念を表明することに合意した」との合意文書を採択して、3日間の日程に幕を閉じた。

 G8首脳は、原油供給量の拡大のため、原油生産量や精製能力の増強、投資拡大も再度呼びかけた。

 英国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ロシア、米国のG8各国は、中国やインドなどの新興5か国を交え、1次産品の高騰に対する対応を協議した。

 サミットは1975年のオイルショックの際に第1回が開催された。現在、エネルギー消費大国となった新興諸国がサミットで影響力を発揮しているのは、現在の世界経済情勢を反映していると言える。

 エネルギー需要拡大の大半は急成長する新興国によるものだが、G8諸国ではロシア以外に主要な原油輸出国は無く、急成長する新興国の需要拡大を主な背景にした原油高騰への対応策も限られたものになってしまっている。

 米バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)東京支店のTomoko Fujiiシニアエコノミストは、G8が、原油高騰の抑制を期待できるような材料をほとんど提供しなかったと述べ、「しかし最初から、市場はあまり期待していなかった。重要な当事者が協議に参加していない状況で、G8が原油の問題を解決することは非常に困難」と話した。

 原油価格は過去1年間で2倍に上昇し、2003年からだと5倍に上昇している。また、前週には1バレル147ドル近くの値を付け、過去最高値を更新した。

 一方、国際通貨基金(International Monetary FundIMF)のドミニク・ストロスカーン(Dominique Strauss-Kahn)専務理事は、一部の新興国でインフレが「制御できない状態になっている」と警告し、インフレ抑制のために金利をさらに上昇させる必要があるかもしれないとの見通しを示した。

 ストロスカーン専務理事は、洞爺湖サミットにあわせて会見し、インフレは「世界経済にとって最大の脅威」だろうと述べた。

 サミットの合意文書では、不安定な米ドルについての言及はなかったものの、ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)仏大統領は、G8首脳は弱いドルが世界経済に悪影響をもたらすとの考えで一致したと述べた。

 アナリストらは、原油先物が米ドル下落に対する保護策としてドル建てで投資家らに買われているため、弱いドルが原油高騰の一因となっているとみている。

 また、投機筋は、米ドルを下支えするためのG8による市場への協調介入は、自国通貨の大幅下落によるインフレを懸念している欧州諸国が消極的だと思われるため、即座に実施される可能性は低いとみている。
 
 中央三井信託銀行(Chuo Mitsui Trust Bank)のYosuke Hosokawa主席FXストラテジストは、「G8サミットは市場に強い影響力はない」と述べ、サミットにおいて経済に対する具体策が発表されることへの期待はもともと低かったとして、「特に、近年サミットは、ほとんど実質のない形骸化したものになっている」と説明した。(c)AFP