【6月30日 AFP】(写真追加)サッカー欧州選手権2008(Euro 2008)のドイツとの決勝でスペインを優勝に導く貴重な得点を挙げたフェルナンド・トーレス(Fernando Torres)は、同僚のダビド・ビジャ(David Villa)と同じ働きができることを証明した。

 今大会で得点ランクトップとなる4得点を挙げているビジャは、29日の夜までトーレスからスポットライトを奪っていたが、ロシアとの準決勝の前半にビジャが負傷を負ったことにより、決勝ではトーレスに大きな舞台が整った。

 ルイス・アラゴネス(Luis Aragones)監督によりセスク・ファブレガス(Cesc Fabregas)を含む5人の中盤を従えて1トップに配置されたトーレスは、試合開始直後こそ精彩を欠いたものの前半20分にヘディングシュートを放ちドイツのディフェンス陣に自らの存在を知らしめると、2分後に再び放ったヘディングシュートは惜しくもポストを叩いたが、栄光の瞬間は33分に訪れた。

 約4400万人のスペイン国民の心拍数を上げる火付け役となったのはシャビ・エルナンデス(Xavi Hernandez)だった。

 シャビの完璧なスルーパスを受けたトーレスは、脚力と技術でフィリップ・ラーム(Philipp Lahm)をかわすと、飛び出したゴールキーパーのイェンス・レーマン(Jens Lehmann)の上を浮かせてボールをサイドネットに流し込んだ。

 トーレスは「夢が叶った。欧州選手権での優勝はW杯と同じくらい価値がある。スペインのフットボールは大会を通してとても素晴らしいかったので、僕たちが優勝したのは正当な結果だ」と語っている。

 後半29分のクリストフ・メッツェルダー(Christophe Metzelder)に対するファウルで受けた警告でトーレスの活躍が色褪せることはなく、4分後の33分にダニエル・グイサ(Daniel Guiza)と途中交代しトーレスの仕事は完了した。

 2007-08シーズンは33得点を記録し、イングランド・プレミアリーグのリバプール(Liverpool FC)で衝撃のデビューを飾ったトーレスは、今大会ではスウェーデンとのグループリーグ第2戦で初得点を記録したが、決勝まではビジャの陰に隠れていた。

 ドイツ戦での決勝点により代表53試合で17得点目を記録したトーレスは、スペインのグループリーグ突破の原動力となったビジャと前線で強力な連携を築き上げた。

 ロシアとのグループリーグ初戦でハットトリックを達成したビジャは「皆は彼のチャンスを作るという仕事に全く気付いていない。僕の2得点は完全に彼のお膳立てによるものだ」とパートナーのトーレスを称えている。

 2001年と2002年に開催されたU16とU23の欧州選手権で大会最優秀選手と得点王に輝いているトーレスは、スペインが決勝トーナメント1回戦で敗退した06サッカーW杯では3得点を記録している。

 推定3000万ユーロ(約50億円)でリバプールに移籍したとされるトーレスは、19歳でアトレティコ・マドリード(Atletico de Madrid)の主将に指名され「神の子(El Nino)」というニックネームをつけられており、24歳になった今大会では26日に行われたロシアとの準決勝で輝きを放つと、決勝でも自らのパフォーマンスを披露してスペインを優勝に導いた。

 この活躍を考えると、チェルシー(Chelsea)がトーレスの獲得に動いているという噂に対してリバプールが「いかなる値段であっても売らない」とした理由も容易に理解できる。(c)AFP/Nick Reeves