【6月22日 AFP】ホー・ビラク(Hor Virak)さんが3年前にブログを始めた当初は、バイクで近所を回り、面白そうな写真を撮ってはブログに掲載していた。

 当時カンボジアにブロガーは一握りしかいなかった。すぐに1人のファンができ、2007年初めごろには毎日数百人がブログを訪れるようになった。今では自分の人気ぶりにワクワクしているという。

 首都プノンペン(Phnom Penh)のカフェでノートパソコンを前にしたホー・ビラクさんは「始めた時はこんなにも有名になるなんて思いもよらなかった」と語る。

■カンボジア人ブロガー「クロガー」

 自分の知名度に対するホー・ビラクさんの態度が謙虚すぎるというなら、それは政府の統計を見れば納得するだろう。人口1440万人のカンボジアでインターネットを利用できるのは、わずかにその10%程度だ。

 ホー・ビラクさんは、保守的な小国のカンボジアを世界に向けて開かれた国にしようと精力的に活動しているカンボジア人ブロガーの1人だ。彼らは自分たちのことを、カンボジア(Cambodia)の「C」とブロガー(blogger)を合わせて「クロガー(clogger)」と呼ぶ。彼らの活動はカンボジア社会にこれまでになかった変革をもたらすかもしれない。

■自分の意見を公に表現

 カンボジアのブロガーはブログで日記を付け、人間関係や学校や社会のことを考えるきっかけにしたり、自分の意見を表明したりしている。これまでには考えられなかったことだ。

 NGO「オープン・インスティテュート(Open Institute)」でブロガーを訓練する活動をしているベ・チャントラ(Be Chantra)さんは、「このように公の場で表現することは、わたしたちの社会ではこれまであり得なかった」と語る。

 カンボジアのブログは、幸先のよいスタートを切ったとはいえなかった。2003年、ベ・チャントラさんと2人の同僚は、マイクロソフト(Microsoft)と米国の援助機関の資金援助を受け国内各地を訪れ、2000人の学生にブログの作り方を教えた。

 しかし、インターネットへのアクセスが不十分だったため、実際にブログを作ったのはトレーニングを受けた学生の5%に満たなかった。

 しかしその後、1000人を超えるカンボジア人がブログを始め、今ではブロガー同士が定期的に集まり、新しいソフトウエアについて互いに教え合うまでになっている。

■「政治厳禁」

 カンボジア人ブロガーの大半は、世界中のユーザーに読んでもらえるよう英語で書き込んでいる。しかし、ブログで最も論じられるテーマに触れる人はほとんどいない。そのテーマとは、政治だ。

 ベ・チャントラさんは、米国や日本に在住するカンボジア人向けに、カンボジア(クメール)語のコメディーをブログに掲載しているが、ブログには「No Politics Here(ここでは政治厳禁)」と書かれたバナーが付いている。

「政治は容易に人を傷つける。それはナンセンスだ」とベ・チャントラさんは語る。

■依然として厳しい報道規制

 前年、ラジオ・フリー・アジア(Radio Free Asia)の記者レム・ピチピセイ(Lem Pichpisey)氏は、政界有力者の違法伐採への関与を報じたことから匿名の殺人脅迫を受け、タイに逃れた。

 カンボジアでのジャーナリストに対する攻撃は近年減少しているが、一方で同国政府は、報道に関する法令に違反したとみられる記者や出版物を処罰するよう、裁判所に働きかけているとの批判を受けている。

 カンボジアは2006年、ジャーナリストが受ける罪として最も多い名誉棄損を非犯罪化したが、現在は厳しい罰金で攻撃的な報道を抑え込もうとしている。

 カンボジア情報省でデジタルメディアの指導にあたるゲーリー・カワグチ(Gary Kawaguchi)氏は、「ブログの良い点は匿名でも利用できることだ」とした上で、「ただし、カンボジアでは報道機関が厳しく管理されているため、身元が判明してしまうこともある。ブロガーは注意する必要がある」と語る。

■大学生ブロガー「自由に表現できる場を」

 大学生のチャク・ソペップ(Chak Sopheap)さんは前年、遠隔地の貧しい地域に目を向けてもらおうと本名でブログを立ち上げたが、与党・カンボジア人民党(Cambodian People's PartyCPP)を批判したことで脅迫を受けた。メッセージには「わたしがあなたなら逃げる。さもなければ殺される」と書かれていたという。

 仲間のブロガーたちは政治批判は匿名で行なうと言っているが、自分のブログは主流メディアよりも自由に表現できるはずだと語る彼女は、今後も意見を書き込むという。

「ブログを通じて人々は考え方や、ものを言わないという習慣を変えていきます。誰でも、社会がどのように発展していけるのかということを話すことができるんです」(c)AFP/Ros Sothea