【6月19日 AFP】ナスリンさん(39)とキミアさんの母娘は、男性の門番が立つ入口から一歩入るとすぐに、ヘッドスカーフとコートを脱ぐ。ここは、5月にオープンしたばかりの、イランの首都テヘラン(Tehran)初の「女性専用」公園だ。

 2人は芝生に寝そべって日なたぼっこをする。タンクトップ姿でジョギングしている女性たちがそばを通りすぎる。「ここでは新鮮な空気を吸えるし、どんな格好でもできるの。ほぼ毎日ここに来るわ」とナスリンさん。

 ナヒドさん(50)は、バドミントンのラケットを持って現れた。「わたしたちはビタミンDが必要なのよ。この何年というもの、わたしたちの健康のことなど無視されてきた。こんな公園をあちこちに作るべきだわ」

 こうした光景は、イスラム教に基づき厳格な服装の規定があるイランでは珍しい。規定では、女性は公の場では髪と体を布で覆わなければならないとされるが、男性の目がないこうした場所では適用されない。

 テヘラン北部の丘の上にある緑あふれたこの「Mothers’ Paradise(母親たちのパラダイス)」公園は、金曜日以外は男性の立ち入りが全面的に禁止される。周囲には高さ4メートルの鉄板がめぐらされ、男性たちののぞき見を防いでいる。

■スタッフも全員女性

 20ヘクタールの広大な敷地では青空エアロビクス教室が開かれ、サイクリングコース、体育館、アーチェリー場まである。

 清掃員、庭師、警備員など、公園のスタッフも全員女性だ。人の出入りには男性の門番が目を光らせる。通常の公園ではセクハラに遭ったり麻薬の売人がうろついていたりすることが多いが、ここは安全だと女性たちは言う。ただし、午後8時という早すぎる閉園時間には、多くの女性が不満をもらす。

 この公園では、女性専用の場所としては珍しく、入り口で携帯電話やカメラを預ける必要もない。同国の警察当局は、女性専用の場所で隠し撮りされた画像が、ネットに掲載されたり販売されるといった事態に頭を悩ませているが、この公園では女性たちを信用してカメラを取り上げることはしないのだという。

■女性専用の公園作りに意欲的な市長

 女性専用公園の構想は、約10年前に持ち上がった。当時のテヘラン市議会は改革派が主流だった。2005年に保守派のマフムード・アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)市長(当時)が大統領選に当選し、同氏とは不仲だった実務派のモハマド・バケル・ガリバフ(Mohammad Baqer Qalibaf)氏が市長に当選したことで、長期間延期されていた計画が現実した。

 市長は同様の公園を今後数か月で少なくとも3つ作る計画だ。だが、先のナスリンさんは「2009年の大統領選で女性票を集めたいというのが市長の魂胆よ」とそっけない。

■公園に批判的な女性たちも

 一方で、男女を別々に隔離してもハラスメントなどの問題は解決されないと、批判的な女性たちもいる。ジェンダー学を専攻している大学院生のソゴルさんは、「責任ある市民として行動し、女性を敬うよう、男性たちを教育する必要がある」と語る。

 38歳の独身女性は、「母親たちのパラダイス」という名前が気に入らないという。「母親じゃなかったら女性じゃないっていうの?」(c)AFP/Hiedeh Farmani