【6月16日 AFP】アメリカンコミックのスーパーヒーローの元祖とも言えるスーパーマン(Superman)が、6月で70歳を迎える。強くて不死身なスーパーマンだが、弱い側面も見せる現代のヒーローたちが活躍する21世紀では、ファンも少なくなっているようだ。

 米ポップカルチャーの象徴でもあるスーパーマンは、1938年6月発行の『アクション・コミックス(Action Comics)』に初めて登場した。原作者はオハイオ(Ohio)州クリーブランド(Cleveland)に住んでいたジェリー・シーゲル(Jerry Siegel)とジョー・シャスター(Joe Shuster)だ。

 空を飛べるが鳥でも飛行機でもない。銃弾より速く、機関車より強く、高いビルもひとっ飛び。身長約190センチ、体重約102キロ、青い目で黒髪のスーパーマンは、普段はクラーク・ケント(Clark Kent)に扮(ふん)して、デイリー・プラネット(Daily Planet)紙に記者として勤務。惑星クリプトン(Krypton)で生まれたが、幼児のころに地球に送られ、数十年の間、真実と正義と米国のために闘い続けている。

■ミッキー・マウス以上に米国の象徴

「スーパーマンは完ぺきな創作物。とても完ぺきで理想的で世界中に知られている。米国ではほとんどの国民が8歳になると彼の出生についていつのまにか知っている。だから、アンクル・サム(Uncle Sam)やミッキー・マウス(Mickey Mouse)以上に、アメリカ的だ」と語るのは、スーパーマンの起源を描いたドキュメンタリー『ラスト・サン(Last Son)』を制作したブラッドレー・リッカ(Bradley Ricca)さん。彼はケース・ウエスタン・リザーブ大学(Case Western Reserve University)で米文学とポップカルチャーを教える教授でもある。

 リッカさんはさらに、「彼は近代米国の象徴で、あらゆる不正と戦うために不完全な世界にやってきた。力、マント、秘密の正体、色鮮やかな衣装、恋愛の複雑な三角関係、そして無敵の正義感などすべてを兼ね備えた、架空のスーパーヒーローだ」と話す。

 一方、ミシガン州立大学(Michigan State University)でアメリカ研究の博士号を持ち、米国史のスーパーヒーローを専門にし、非営利団体「コミック・スタディーズ(Comics Studies)」を率いるピーター・クーガン(Peter Coogan)さんは「スーパーマンは、ヒーローの元祖で、その後のヒーローの基準を作り上げた」と主張する。

「スーパーマンは、米国の神話を体現するものとして象徴的な役割を果たしている。すべてのスーパーヒーローはスーパーマンの模倣かその子孫だ。スーパーヒーローは米国独自のやり方でそのパワーを発揮し、自分自身の善悪の概念を他人にも強要し、他人に、特に悪人に対しては圧倒的な力を振るうのだ」

■時代と共に移り変わるスーパーマンの個性

 一方、ジョージア州立大学(Georgia State University)の学生アーロン・ピービー(Aaron Pevey)さんは、2007年の修士論文で、スーパーマンは不死身なために人気を失ったと述べている。「スーパーマンはモダンなヒーローとしては成功したかもしれないが、ポストモダンなヒーローとしては失敗した」として、これがこの数年間でスーパーマンの漫画本の売れ行き不振の原因だと説明している。

 現代の10代は、バットマン(Batman)、スパイダーマン(Spider-Man)、「X-メン(X-Men)」のウルヴァリン(Wolverine)など、暗く、問題を抱え、ときにはヒーローらしからぬ感情を抱くヒーローを好む。

 第二次世界大戦前に誕生し、フリードリヒ・ニーチェ(Friedrich Nietzsche)の「超人」論を引き継いだかのようなスーパーマン。だがその個性は、時代の移り変わりとともに変化している。

 1940年代の好戦的な内容に比べると50年代のストーリーの重点は、スーパーマンの同僚であり未来の妻でもあるロイス・レイン(Lois Lane)に対するクラーク・ケントの愛情を描くことに移っている。60年代、70年代になると、その個性はさらに複雑に。1986年にDCコミック(DC Comics)はジョン・バーン(John Byrne)を起用してキャラクターの見直しを計った。その結果、救世主というより、現代の「ヘラクレス」的な人物としての側面が描かれるようになっている。

 漫画本の売れ行き不振が原因で、1993年には強力な敵ドゥームズデイ(Doomsday)との戦いでスーパーマンは殺されてしまう。もちろん、「明日の男(The Man of Tomorrow)」などさまざまな異名を持つスーパーマンは死から生還する。

 リッカさんは語る。「スーパーマンは今まで耐え抜いてきた。だから、これからも耐えていくだろう。彼はパンツを外側に履いて、髪をカールさせたただのまぬけなキャラクターではない。彼は、われわれが善良な存在でいられるという希望の象徴だ」(c)AFP