【6月16日 AFP】清の康煕帝の印章が14日、フランス南部トゥールーズ(Toulouse)で行われたオークションに出品され、470万ユーロ(約7億8000万円)で落札された。競売主催者によれば、印章の落札価格としては史上最高額だという。

 この印章は凍石製で重さ3キロ、色はベージュ色。康煕帝が使用していた130個の印章のひとつ。大きさは縦14センチ、横10センチで、雲の中を飛び回る2匹の龍とともに、赤い色の6つの漢字が刻まれている。

 落札したのは、中国から電話で参加した入札者。オークションを主催したHerve Chassaing氏は、「こんな価格を付けられるのは、中国人だけだろう。米国人や博物館も興味を持ったようだが、これほどの大金は出せなかった。しかし中国人にとっては、この印章は母国の歴史の重要な一部なんです」と述べている

 中国の印章に付けられたこれまでの最高額は、前年に香港(Hong Kong)で落札されたヒスイの印章に付けられた425万ユーロ(約7億円)だった。

 康煕帝の在位期間61年は中国史上最長で、世界でも最も長い部類に入る。それまで清の支配に抵抗していた台湾を制圧し、領土を北西へ拡大。文化的には康熙字典を編纂し、長きにわたる戦争と混乱のあとに、安定と繁栄の時代をもたらした。これらの功績により、中国史上、最も重要な皇帝の1人とされている。

 アジア美術の専門家によると、多才な康煕帝が描いた絵画の署名に用いられたこの印章は、並外れた大きさで、象牙と漆でできた箱に入った状態で発見された点が極めて珍しく、貴重な歴史的遺物だという。

 この印章はトゥールーズのある裕福な旧家の物入れの中から発見されたが、その家族は印章の価値や用途を理解していなかった。(c)AFP