【6月12日 AFP】フィデル・カストロ(Fidel Castro)前国家評議会議長(81)の後継として2月に就任したキューバのラウル・カストロ(Raul Castro)議長(77)は11日、次々と打ち出す改革の一環として、賃金の上限額の撤廃を発表した。統制経済を採用する共産主義国キューバにおいて、賃金の上限は平等主義の支柱のひとつだったが、新政権は生産性を損なっている要因としてこれを撤廃する。

 キューバ国民の平均月給は約17ドル(約1830円)。大半はこれをキューバペソで稼いでいるが、食品や衣料、日常生活に必要な品は国営の外貨専門店でしか販売されておらず、国民はやりくりに苦労している。キューバでは長年、街頭の清掃業から脳外科医まで、大半の職業の賃金差は月額わずか2、3ドル以内だった。新政権は2月に賃金の改革方針を打ち出していた。

「この新賃金体系は、生産性とサービスを向上させる道具としてみなすべきだ」と、労働・社会保障省のカルロス・マテウ(Carlos Mateu)副大臣は、日刊の共産党機関紙グランマ(Granma)に語った。マテウ氏によると雇用主は8月までに新体系に移行しなければならない。

 同氏はさらにマテウ氏を引用し「その人の貢献に応じて収入を得るという社会主義分配原則、言い換えれば、(労働の)質と量によって支払われるという原則が達成されるだろう。これまで概して、収入を一定とする傾向があったが、そうした平等主義は有効でなく、修正されるべきものだ。労働者の労働に見合わない賃金を払うことも、払いすぎることも有害だ」というキューバ高官としては異例の談話を披露した。

 前議長が健康上の理由から第一線を退いた2006年7月以降、実質的に政府を主導してきた実弟カストロ新議長は、2008年2月24日に就任。それ以来新政権は短期間で、土地の再分配や農業の非中央管理化、コンピューターや携帯電話の購買自由化、外国人にしか許可されていなかったホテル宿泊の許可といった改革を次々と決定している。新賃金政策は一連の中で発表された最新のものだ。また改革の中には、世界的な食糧危機による影響を緩和する策として、農業従事者の賃金引上げと耕作機械購入の柔軟化なども含まれる。

 経済面以外ではラウル議長は就任後、30人の死刑囚を減刑し、政治犯の一部を釈放、人権条約への調印なども行った。TVに対する放送禁止項目も緩和され、党機関紙のグランマでさえも住民の苦情を掲載するに至っている。

 しかし、ラウル議長がキューバの一党独裁体制を緩める気配はなく、対外的な民間企業への開放、渡航制限の撤廃、二重通貨制の撤廃など、望まれる変革項目のリストは依然続く。中南米の多くの人々はラウル議長の改革を歓迎しているが、「最大の敵国」である米国はこれらの改革について「うわべにしか過ぎない」とはねつけている。(c)AFP