【6月9日 AFP】四川大地震で大きな被害を受けた四川(Sichuan)省の都江堰(Dujiangyan)で、3歳のオールド・イングリッシュ・シープドッグ「シンシン」が飼い主のもとを離れようとしている。

 安全な場所に移動させるため、動物愛護団体「亜州動物基金(Animals Asia Foundation)」のケージに入れられるシンシンを見つめながら、飼い主は「悲しい。彼女はわたしたちの家族の一員だったから」と涙をぬぐう。

 四川省成都(Chengdu)に本部を置く同団体は、これまでにシンシンのような被災犬を100匹以上救出してきた。地震が発生してから約1か月。人間の救助・避難はほぼ完了したように見えるが、ペットの窮状に目が向けられるようになったのはつい最近になってからだ。

 家を失った数百万人の多くは仮設テントで暮らしているが、衛生上の理由からペットの持ち込みは禁止されている。持ち込んだ場合は当局に即座に処分されることもあり、全半壊した自宅で飼い続けている人もいる。

 同団体を創設した英国人のジル・ロビンソン(Jill Robinson)氏は、そうした行為は飼い主にとってもペットにとっても危険だとしながらも、ペットを殺処分する当局のやり方も間違っていると主張する。犬や猫はネズミや害虫の繁殖を抑えてくれるのが理由の1つだが、「地震で愛する人々を失ったかもしれない人々を、犬や猫は無条件の愛で慰めてくれる」のが大きな理由だという。

 同団体の成都の施設は、もともと、漢方薬のための胆汁を取るために捕獲されたツクノワグマのリハビリに力を入れていたが、今回の地震後には被災地を定期的に訪れ、ペットの面倒を見ることができない被災者からペットを回収し、暮らす場所と食べ物、そして獣医による診察を無料で提供している。

 愛犬「ポテト」を同団体に預けた70歳の男性は、ポテトに助けられた話をしてくれた。「彼は地震の1分前に、寝ているわたしのズボンのすそを引っ張って起こしたんです。そして地震が来た。わたしが戸口から数歩出たところで家は崩壊した。ポテトがわたしを救ってくれたんです」

 都江堰には数件のペットショップがあったが、地震後放置され、ペットは糞尿のなかでの生活を余儀なくされている。ショップのオーナーは時々店に戻って餌をやるなどしているが、同団体のスタッフは、ペットを施設に預けるよう説得を続けているという。

 同団体に収容されるペットは増え続けていることから、ロビンソン氏は、施設を増築するための資金をホームページ(animalsasia.org)でつのっている。「動物をたくさん受け入れすぎるというのも問題で、いつかは受け入れられなくなる日が来るはずですが、今はできる限りペットたちを助けようと努力しています」(c)AFP

亜州動物基金(animalsasia.org)の公式ホームページ