【5月26日 AFP】米国では、ブッシュ家から親子で大統領が誕生し、クリントン家も夫婦そろっての大統領就任を目指しているが、政治家を輩出する一族としてケネディ家の力と栄光の右に出るものはいない。そのケネディ家が、新たな「悲劇」に揺れている。

■米政界に君臨する一家の魅力

 政治家の地盤が親から子に引き継がれるのが慣習の米政界においても、数世代にわたって政治家や陰の実力者を輩出してきたケネディ家は、際だつ存在だ。

 若手ホープとしてロードアイランド(Rhode Island)州選出のパトリック・ケネディ(Patrick Kennedy)下院議員が注目を集める一方、同議員の父親で現在の家長であるエドワード・ケネディ(Edward Kennedy)上院議員の影響力もいまだ健在。雷のように轟く大声と赤ら顔がトレードマークで、民主党の重鎮として存在感を放っている。

 そのエドワード氏が悪性の脳腫瘍(しゅよう)に冒されていることが発覚した。医師らの診断ではエドワード氏の病状は思わしくない。同氏が発症したタイプの脳腫瘍の場合、平均余命は数か月から5年程度だという。

 エドワード氏の発病は、米国民に衝撃を与えただけにとどまらず、富豪ケネディ家の華々しい権力や栄光の持つ魅力を改めて思い起こさせ、愛情と同情が高まった。

■兄たちの死で頭角をあらわす

 エドワード氏は、父ジョセフ・ケネディ(Joseph Kennedy)と母ローズ(Rose Kennedy)との間に9人の兄弟姉妹の末っ子として生まれ、1962年に30歳で、大統領に就任した兄の故ジョン・F・ケネディ(John F. Kennedy)大統領の地盤を引き継いで下院議員に当選した。

 エドワード氏ら4兄弟のうち、長男ジョセフ・ケネディ(Joseph Kennedy)氏は第2次大戦中に飛行機事故で、ジョン・F・ケネディ大統領(当時)と弟のロバート・ケネディ(Robert F. Kennedy)上院議員(当時)はともに暗殺者の凶弾に倒れ、死亡した。残されたエドワード氏には、兄たちの遺志を引き継ぐべく、大きな期待がかけられた。

 80年には大統領選に出馬するが、ジミー・カーター(Jimmy Carter)元大統領と民主党の候補指名を争い、敗北した。

 だが、大統領の座こそ逃しているものの、数々の政局を乗り越えてきたエドワード氏の半世紀におよぶ議員経験は、米議会史に確固たる歴史を刻んでおり、愛情と尊敬をもって記憶される政治家となることは間違いない。

■一族を彩る実績とスキャンダル

 議員生活の中で、エドワード氏は市民権や移民法、教育・健康問題を推し進めてきた。また、がん治療や予防研究にも積極的に関わっている。北アイルランド(Northern Ireland)の和平交渉でも重要な役割を演じた。

 一方で、エドワード氏自身も含めケネディ家には常にスキャンダルと悲劇がつきまとう。今でこそ落ち着きと貫禄のあるエドワード氏だが、過去には数々の女性遍歴や飲酒癖でならした。離婚経験もある。

 また69年7月には、米マサチューセッツ(Massachusetts)州チャパキディック島(Chappaquiddick Island)での選挙運動中に自動車事故を起こし、同乗していた選挙運動員の女性を死亡させている。この時、エドワード氏は現場から逃走したため、後に事故現場を離れたとして禁固2月の執行猶予付き実刑判決を受けた。

 このほか、ケネディ家では故ロバート議員の息子でエドワード氏のおいにあたるデイビッド・ケネディ(David Kennedy)氏が、84年に薬物の過剰摂取で死亡。91年には別のおい、ウイリアム・ケネディ・スミス(William Kennedy Smith)氏が、無罪になったものの婦女暴行罪で告訴されている。

 また故ジョン・F・ケネディ大統領の息子で「ジョン・ジョン(John-John)」の愛称で親しまれていたジョン・F・ケネディ・ジュニア(John F. Kennedy Jr.)氏も、99年に飛行機事故で死亡している。(c)AFP