【5月24日 AFP】イタリアの暗黒街に君臨するボスと、腐敗した政治家たち。イタリア政界のウラ側――犯罪と汚職――を暴くイタリア人若手監督の2作品『Gomorra』と『Il Divo』が、第61回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)の観客を魅了し、批評家からも高い評価を得ている。

 コンペティション部門に出品された2作品は、イタリア国内では「国の暗部をわざわざ映画でさらけ出した」と冷たく受け止められている。

「イタリアでは、国について語った者は国家侮辱罪で起訴される」と、『Gomorra』のマッテオ・ガローネ(Matteo Garrone)監督(39)は語る。同作品はナポリ(Naples)に本拠を置くマフィア「カモラ(Camorra)」の実態を暴くロベルト・サヴィアーノ(Roberto Saviano)作のベストセラーノンフィクション『死都ゴモラ(Gomorra)』を下敷きにしたものだ。

「わたしたちは真実を必要としている。わたしたちの国で起こっていることについて沈黙することこそ、国を中傷しているに等しい。だから、この物語について語ることは大切なのです」

 一方、パオロ・ソレンティーノ(Paolo Sorrentino)監督(37)の『Il Divo』は、黒い噂が絶えなかった終身上院議員で元首相のジュリオ・アンドレオッティ(Giulio Andreotti、89)をテーマに据える。首相を7回務めたアンドレオッティは、マフィアとの癒着の噂が絶えず、司直の手も入ったが、裁判では無罪になったこわもての人物だ。ソレンティーノ監督の場合は、資金集めに苦労したという。

■「ドキュメンタリー風」と「オペラ風」で暗部に迫る

 2作品ともそのオリジナル性の強いアプローチが評価され、パルム・ドール(Palme d'Or)の最有力候補に挙げられている。類似したテーマを扱った2作品だが、それぞれのアプローチは大きく異なる。

 『Gomorra』はリアリズムを冷徹に追求したドキュメンタリー形式をとっている。10代のガンマン、カモラの金庫番、有害ゴミの故意の不法投棄の背後にいる裕福なビジネスマンといった登場人物たちが織りなす1枚のクモの巣をたどっていく。

 こうしたスタイルについて、監督は「戦争のルポルタージュに大きく触発されたもの」と語っている。「非常に強く感情に訴える映画にしたかった。実際にそこにいて、においまでかげるような感覚を、観た人に与えたかった」

 一方「イタリアで葬り去られようとしている時代に目を向けたかった」との動機で作られた『Il Divo』は、イタリアの豪華宮殿で撮影され、アンドレオッティ元首相を時にコミカル、時に腹黒い「現代のマキャベリ」としてテンポ良く描く。ほとんどオペラ風で、BGMには様々なジャンルの音楽を使用。キリスト教系政党の議員や教会の上層部との仲むつまじい様子や、議会での買票疑惑などをつぶさに追う。(c)AFP/Claire Rosemberg