【5月21日 AFP】米国の控訴審裁判所で20日、すべて同じサイズに統一されている米国の紙幣は視覚障害者を差別しているとの判断が下され、政府に対して紙幣のサイズと質感を変更するように命じた。

 今回の判断は2006年11月にジェームズ・ロバートソン(James Robertson)連邦判事が下した判断を支持するもの。ロバートソン判事は、米国に300万人以上いるといわれる視覚障害者が、色もサイズも同じ紙幣を区別しにくい状況にあるとして、米財務省に対策を命じていた。

 今回の裁判所は、米国の視覚障害者団体「American Council of the Blind」の訴えを認めた前回の判断を2対1で支持することを決定し、ロバートソン判事の判断に言及して具体的な措置をとるように求めた。

 American Council of the Blindは、世界180か国以上が紙幣を発行しているが、米国だけが全ての額面の紙幣で同一の色やサイズを採用しているとして訴えていた。

 判決で裁判所は米国紙幣を日本や欧州諸国の紙幣と比較した上で、「ほかの国の通貨制度の大半は視覚障害者に対応している。(財務省は)米国の通貨システムで対応していない理由を説明していない」とした。

 米財務省の広報官は「判決を詳しく検討している」とするとともに、「財務省はこれまで、視覚障害者も含めたすべての米国人の要望に対応できるよう、紙幣の改善に努めてきた」と強調した。

 米財務省は紙幣のサイズ変更について、財政的・行政的負担が大きいとして、これまで数回にわたって反対してきた。同省によると、サイズ変更にあたっては新たな印刷機の購入が必要で、約1億7800万ドル(約184億円)の購入費用と額面ごとの印刷に対応するためにはそれぞれ3700万ドル(約39億円)から5000万ドル(約52億円)が必要だとしている。

 2006年の資料では、米国には、法律上失明していると認められている人が約93万7000人おり、新聞が読めないなどの「弱視」の人が240万人いるという。(c)AFP