エイズウイルス発見25周年、「ゲイの病」から「人類の悲劇」へ
このニュースをシェア
【5月20日 AFP】エイズ撲滅運動は20日、エイズ(HIV/AIDS)ウイルスの発見から25周年という節目を迎えた。第1次世界大戦の犠牲者数を上回る死者を出したエイズとの戦いの25年は、科学と人類の精神力の勝利を示す反面で、病気への偏見や無知との戦いでもあった。
■早期の病原菌ウイルス発見に成功
免疫システムの機能を低下させるこの謎の疾患は、1981年に米国の同性愛者の間で発症者が発見されたことから、英国大衆紙が「ゲイ病」と書き立てた。
1983年5月20日、仏パスツール研究所(Pasteur Institute)のリュック・モンタニエ(Luc Montagnier)氏が主導する研究チームが、世界で初めてエイズで死亡した患者の病原菌ウイルスを発見したとの論文を、米科学誌「サイエンス(Science)」に発表した。
これに続き、米国のロバート・ギャロ(Robert Gallo)博士が、モンタニエ氏が発見したウイルスが後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因であることを確認。この疾患の謎をとく鍵がついに発見されたのだ。
しかし、真のエイズ(HIV/AIDS)ウイルス発見者はどちらかをめぐりモンタニエ氏とギャロ氏が争いが勃発。結局3年後、エイズ発見者の栄誉を両氏が分け合うことで決着した。
謎の病原菌の実態がこれほど早く解明されることはまれで、エイズ撲滅の機運は一気に高まり、エイズ撲滅への道も順調に進むと思われた。
1984年4月、ギャロ氏が最初のウイルス発見者だと主張したとき、マーガレット・ヘックラー(Margaret Heckler)米厚生長官(当時)は「ギャロ氏のエイズウイルス発見は、この恐ろしい病気に科学的に勝利したことを意味する」と語り、ワクチンが2年以内に完成する可能性もあるとの希望を語った。
■治療法開発に向けての困難な道のり
だが、その時点で希望的観測を語るのはあまりにも時期が早過ぎた。この時点でエイズによる死者はわずか3000人だったが、25年経過した今、エイズによる死者数は男女含めて2500万人、エイズウイルス感染者は3300万人に膨れ上がっている。また、1100万人以上の子供たちが両親か片親をエイズで失った。こうした人類未曾有の病については、被害規模を推し量ることさえ不可能だ。 フランスの医学者、Olivier Schwartz氏は「この25年間、医学界はエイズの解明において多くの間違いを犯してきた」と悔やむ。
しかし、医学研究所の研究がエイズウイルス撲滅に向け確実に前進していることも事実だ。1990年代半ばに数種類の抗ウイルス剤を混合投与する「カクテル療法」の開発により、これまで不治の病とされてきたエイズの治療に光明がもたらされた。
だが、エイズウイルスは既存の病原菌のなかでも最も不可解なもので突然変異を起こしやすいことから、有効なワクチンはまだ開発されていない。
エイズウイルスの防止対策として膣用ジェルや殺菌剤もあるが、使い勝手が良いとはいえない。21世紀になった現在でも、最も有効なエイズ防止対策は19世紀に開発されたコンドームの使用か、もしくは一生、性行為を慎むことしかない。
政治家や宗教指導者、それい伴い一般大衆がエイズをタブー視してきたことも、病の究明には致命的な遅れをもたらし、エイズ感染を拡大させた一面も否めない。(c)AFP/Richard Ingham
■早期の病原菌ウイルス発見に成功
免疫システムの機能を低下させるこの謎の疾患は、1981年に米国の同性愛者の間で発症者が発見されたことから、英国大衆紙が「ゲイ病」と書き立てた。
1983年5月20日、仏パスツール研究所(Pasteur Institute)のリュック・モンタニエ(Luc Montagnier)氏が主導する研究チームが、世界で初めてエイズで死亡した患者の病原菌ウイルスを発見したとの論文を、米科学誌「サイエンス(Science)」に発表した。
これに続き、米国のロバート・ギャロ(Robert Gallo)博士が、モンタニエ氏が発見したウイルスが後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因であることを確認。この疾患の謎をとく鍵がついに発見されたのだ。
しかし、真のエイズ(HIV/AIDS)ウイルス発見者はどちらかをめぐりモンタニエ氏とギャロ氏が争いが勃発。結局3年後、エイズ発見者の栄誉を両氏が分け合うことで決着した。
謎の病原菌の実態がこれほど早く解明されることはまれで、エイズ撲滅の機運は一気に高まり、エイズ撲滅への道も順調に進むと思われた。
1984年4月、ギャロ氏が最初のウイルス発見者だと主張したとき、マーガレット・ヘックラー(Margaret Heckler)米厚生長官(当時)は「ギャロ氏のエイズウイルス発見は、この恐ろしい病気に科学的に勝利したことを意味する」と語り、ワクチンが2年以内に完成する可能性もあるとの希望を語った。
■治療法開発に向けての困難な道のり
だが、その時点で希望的観測を語るのはあまりにも時期が早過ぎた。この時点でエイズによる死者はわずか3000人だったが、25年経過した今、エイズによる死者数は男女含めて2500万人、エイズウイルス感染者は3300万人に膨れ上がっている。また、1100万人以上の子供たちが両親か片親をエイズで失った。こうした人類未曾有の病については、被害規模を推し量ることさえ不可能だ。 フランスの医学者、Olivier Schwartz氏は「この25年間、医学界はエイズの解明において多くの間違いを犯してきた」と悔やむ。
しかし、医学研究所の研究がエイズウイルス撲滅に向け確実に前進していることも事実だ。1990年代半ばに数種類の抗ウイルス剤を混合投与する「カクテル療法」の開発により、これまで不治の病とされてきたエイズの治療に光明がもたらされた。
だが、エイズウイルスは既存の病原菌のなかでも最も不可解なもので突然変異を起こしやすいことから、有効なワクチンはまだ開発されていない。
エイズウイルスの防止対策として膣用ジェルや殺菌剤もあるが、使い勝手が良いとはいえない。21世紀になった現在でも、最も有効なエイズ防止対策は19世紀に開発されたコンドームの使用か、もしくは一生、性行為を慎むことしかない。
政治家や宗教指導者、それい伴い一般大衆がエイズをタブー視してきたことも、病の究明には致命的な遅れをもたらし、エイズ感染を拡大させた一面も否めない。(c)AFP/Richard Ingham