【5月17日 AFP】(写真追加)第61回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)は16日、ボクシングの元ヘビー級世界王者マイク・タイソン(Mike Tyson)の半生を描いたドキュメンタリー『Tyson』をプレミア上映した。この映画は「ある視点」部門に出品されている。

 映画は、来月で42歳になるタイソンのボクシング人生のハイライトシーンを織り交ぜつつ、合計30時間を超えたというインタビューを編集したものだ。ブルックリンのゲットーでの少年時代から世界チャンピオンに登り詰めた絶頂期、そして薬物中毒、リング上での耳噛みつき事件、レイプ事件など、英雄からの転落の軌跡も描く。

 全編タイソンの観点から描かれたこの映画で、過去を回想するそのタイソンは朗らかで、穏やかだ。その巨体からは甲高い声、舌足らずの言葉が発せられる。

 ダークグレーのエレガントなスーツに身を包んだタイソンは、上映後、感動を抑えきれないといった様子で、ジェームズ・トバック(James Toback)監督とともにステージに上がり、「ジム(=監督)は僕からすべてを引き出してくれた。どうやってそれができたのかはわからないけれど」と語った。これをそばで聞いていた監督は、涙をこらえている様子だった。 

 2005年にリメイクされフランスでヒットしたドラマ『Fingers』で知られる監督は、上映会の前に、「タイソンを『複雑、崇高かつ偶像的な人物』として描くことに成功したと思う」と語っていた。

 映画祭のディレクターを務めるティエリー・フレモー(Thierry Fremaux)氏は、『Tyson』を「1人の男の記憶と1つのスポーツの思い出を伝える非常に特別な映画」と評している。

タイソンは上映前、ファンとの握手や記念撮影ににこやかに応じていた。(c)AFP