【5月9日 MODE PRESS】トム・ケイリン(Tom Kalin)監督の『美しすぎる母(Savage Grace)』が今年初夏に全国で公開される。4月18日、プロモーションのため来日したケイリン監督とプロデューサーのケイティ・ルーメル(Kaite Roumel)が、同作品について語った。

-タブーが多いこの作品を映画化しようと思った理由は?

ケイリン監督(以下K):複雑なキャラクターが登場する、複雑なストーリーだったから面白いと思った。原作を読んで、どうしてこのような事件が起こったのかという興味を持った。

ルーメル(以下R):今作は、フィクションよりも事実が衝撃的な例の1つで、愛の限界や家族関係について描いた作品。

-映像化するにあたって気をつけたことは何?

K:映画では1946-1972年という長いスパンで、各キャラクターの旅が描かれていてユニークだ。ジュリアン・ムーア(Julianne Moore)や、若手のエディ・レッドメイン(Eddie Redmayne)、ブルックス(Brooks)役のスティーヴン・ディレイン(Stephen Dillane)など才能豊かな俳優が集まった。このピンクのスーツは、(横にあるスーツを指しながら)カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)がジュリアンのためにデザインしたものだ。この作品は、4つの国が舞台になっているが、撮影は全てバルセロナ(Barcelona)で行ったことも、米国人の自分としてはチャレンジだった。

-ジュリアン・ムーアとエディ・レッドメインを起用した理由は?

R:ジュリアンの起用は、当初から監督がもう決めていたのと、資金集めが理由。エディは、オーディションで決めた。

-この2人の俳優の関係性は?

K:オーディションの段階から2人のコラボが始まった。オーディションにはジュリアンも同席し、エディを見た時に私もジュリアンも彼だと思った。2人とも全く違ったアプローチを取り、ジュリアンは本能で演技するが、エディはリハーサルや分析を求める。この違った2人が一緒に演じることで化学反応のようなものが起きた。エディのルックスもジュリアンの実の息子に似ている。

-ジュリアン・ムーアの衣装について何か意図したことはあるか?

R:衣装は内面を表している。それぞれの衣装が各キャラクターの段階を表し、過程を見せている。1946年には、バーバラは若かったので、若々しいラベンダー色のドレスを着ている。でも最後のシーンでは対照的な赤い、強い色のシャネルスーツを着ていて、彼女の強烈な気持ちが表現されている。私はビジュアルアーティストとして絵画を学んでいたので、色がストーリーテリングにどれほど役立つかに興味がある。最後のシーンではとても暗い茶色をイメージしているのに対し、パリでのシーンではピンクのカラフルなイメージなど各シーンも色で考えている。

衣装はオペラ衣装を担当しているスペイン人のガブリエラ・サラヴェッリに依頼した。オートクチュールはディディエ・リュド(Didier Ludot)に担当してもらった。彼はヴィンテージものを沢山持っているので、ジバンシィ(Givenchy)やシャネル(Chanel)の衣装を使用することができた。

-この題材を選んだ理由は?

K:最も根本的な人間関係、家族関係が基で起きた事件で、人生でも重要な愛の限界を扱った話だ。キャラクターは人間の最も基本的なものを描いているので、見ている人が人間の本質を探求できるのでは。また、悲しさと美しさ、エレガンスとバイオレンス、優しさと怒りなどの 真逆の資質を取り扱っていることも選んだ理由の1つ。

-なぜトニーは母親を殺したのか?

K:母親との密接な関係を経て、自分の道を見つけなければならないが、トニー(Tony)はそれができなかった。皆に愛されていなければならなかったバーバラも、2人の関係を破滅へと導いてしまった。バーバラ(Barbala)の死である意味2人は解放される。最後のシーンでは、、「母は息子に殺されたのか」もしくは「母親は自殺のために息子を利用したのか」ということを考えて欲しい。後者が妥当ではないかと思うが、追い詰められたバーバラは1番愛する息子に自分を殺させるしかなかった。

-女性から見たバーバラの生き方とは?

R:バーバラはとてもナルシスト。でもジュリアンや私がこの作品に引かれたのは、実際に起きた事件の中でバーバラのような女性は珍しいから。強烈で、自分の思うように突き進んでいく女性だ。

-ジュリアンのメイクで工夫したことは?

K:ニコール・キッドマン(Nicole Kidman)主演の『アザーズ(The Others)』のメイクを担当したスペイン人のメイクアップアーティストが手掛けた。衣装で時の長れは表現できたので特殊メイクは避けた。ジュリアンが絶望するシーンは、ノーメイクで撮影した。最後のシーンでは、「社交界の女」らしく隙のないメイクに仕上がっている。息子のトニーがナレーションをしていることからも、彼の目に映るバーバラはあまり年を重ねない。その為、バーバラをそこまで老けさせる必要もなかった。振る舞い方や小道具によっても年齢を表現しているから。

-バルセロナロケでの思い出は?

R:マジョルカのシーンで使った城は1000年もの歴史があるところで、素晴らしい体験だった。バルセロナでロケ地を見つけるのは大変だったが、なんとか無事見つけることができた。

K:夏だったので、ビーチが込んでいて撮影が困難だった。設定が60年代だったので、ヌーディストが沢山いてはだめだった。撮影中は、映らないように協力してもらった。

冒頭のニューヨークのシーンは、バルセロナでやっと見つけたニューヨークらしい通りだった。ビルの住人全員に許可をもらって、冬のシーンだったので、雪の代わりに塩をまいて撮影した。(c)MODE PRESS

公開情報:6月7日よりBunkamuraル・シネマ他、全国順次ロードショー