【5月7日 AFP】2006年12月30日に人道に対する罪で死刑を執行されたサダム・フセイン(Saddam Hussein)元イラク大統領の獄中記が、ロンドン(London)で発行されるアラブ系日刊紙アルハヤト(Al-Hayat)に掲載され、性病への感染を恐れていたことなどフセイン元大統領の拘束中の様子が明らかになった。

 フセイン元大統領は拘束中、「若者の病気」に感染することを恐れ、看守らの洗濯物と自分の洗濯物を一緒に干さないでくれと頼んでいたという。

「わたしの大きな懸念の1つは、ここで性病やAIDSに感染することだ。他国に侵攻してきた者どもはその国に危険な病気以外に何をもたらすことができるんだ」

 アルハヤト紙に掲載されたフセイン元大統領の手記のいくつかは日付入りの手紙や詩の形式で書かれていた。フセイン元大統領は、数冊の本や詩集を執筆していることで知られている。同紙はこの手記の入手経路を明らかにしていない。

■伝記も出版予定

 イラクの弁護士Khalil al-Dulaimi氏は6日、AFPに対し、フセイン元大統領の幼年期から処刑までの生涯をたどった伝記3巻組の第1巻が今年出版されることを明らかにした。

 フセイン元大統領の弁護団の1人だったDulaimi氏は、この伝記にはフセイン元大統領の手書き文書や拘束中に同氏が行ったインタビュー内容が含まれているという。

 Dulaimi氏によると、フセイン大統領は衛生意識が高く、服も自分で洗っていたという。だが、フセイン元大統領は同氏に対し「AIDSやそれに対する恐れに関して一言も語ってくれなかった」という。

 フセイン元大統領の潔癖性ぶりは、2007年にロナルド・ケスラー(Ronald Kessler)氏によって出版された『The Terrorist Watch(テロリスト・ウオッチ)』でも触れられている。この本で証言した、フセイン元大統領の尋問を担当した元FBI捜査官George Piro氏は、フセイン元大統領が手や足を隅々まで拭くために、乳幼児用のウェットティッシュを差し入れたという。

 また、Piro氏によると、フセイン大統領は拘束中1日5回のお祈りを欠かさず、高級ワインやスコッチウイスキーの「ジョニーウォーカーブルーラベル」とキューバ製葉巻を好んだ。また、女性にはすぐ目を付けたといい、「米国人の女性看護師が採血に現れたとき、君はかわいらしいねと英語で伝えるよう頼まれ、Piro氏はちゅうちょした」とケスラー氏は書いている。

■「もう一度結婚したい」とのジョークも

 フセイン元大統領は拘束中、診察を受けた医者に対しジョークを飛ばすこともあったという。フセインもと大統領は医師に対し「わたしがもう一度結婚して子どもをもうけることをアッラーがお許しになりますように。その子たちにはウダイ(Uday)とクサイ(Qusay)、ムスタファ(Mustapha)と名付けよう」と冗談をいったという。

 フセイン元大統領の長男ウダイ(Uday Hussein)氏と次男クサイ(Qusay Hussein)氏は、2003年7月にイラク北部モスル(Mosul)での米軍との戦闘で死亡している。

 フセイン元大統領は手記の中でイランの脅威にも触れ、イラクやアラブ諸国にとってイスラエルよりも危険な存在だと述べている。

 フセイン元大統領の弁護士の1人は、元大統領が拘束中に書きためた文書や詩などが、処刑後に検閲のために米軍によって没収されており、米軍は返却すると約束していたと主張している。(c)AFP