【5月6日 AFP】オーストリア東部で父親が実の娘を自宅の地下室に24年間監禁し、性的暴行を加えて子ども7人を産ませていたとされる事件で、ヨーゼフ・フリッツル(Josef Fritzl)容疑者(73)は監禁の6年前から地下室建設を計画していたことが明らかになった。警察が5日、発表した。

 フリッツル容疑者は1984年、娘が18歳だった時に監禁を始めたとされるが、警察によると、すでに1978年に地下室の建設を計画していたという。その年に地下室の拡張工事の許可を得た後、5年間かけて完成させたという。

 オーストリア警察のフランツ・ポルツァー(Franz Polzer)主任捜査官は「計画の段階で、すでに監禁用の秘密区画を設ける意図があったと思われる」と語った。

 警察によると、娘やその子ども3人が監禁されていた地下室にたどり着くには8つのドアがあり、最後の3つには暗号入力が必要な電子錠が取り付けられていたという。さらに2つのドアは強化鋼製で、さらにもともとあった地下室の入り口ドアはコンクリートで補強され、重さが500キロもあったという。

■拘置所では落ち着きをみせる

 フリッツル容疑者は現在、ザンクトペルテン(St. Poelten)の拘置所に拘置されている。拘置所関係者がオーストリア通信(APA)に語ったところによると、同容疑者は特に問題も起こさず落ち着いており、周囲を警戒している様子だという。

 フリッツル容疑者は、同容疑者と同房になることに同意した収容者1人とともに2人部屋に収容されているが、暴力行為を受けることなどを避けるためその他の収容者からは隔離されている。監房内で食事をし、毎日1時間だけ許可されている中庭での運動は断っているという。

 一方、精神科医ら病院関係者は5日、監禁されていた3人の子どものうち2人の状態は「徐々に改善」しているとしたが、一番年上の19歳の娘は引き続き人工的な昏睡(こんすい)状態に置かれている。2人の子どもには、フリッツル容疑者が与えていたものに似た水槽や、地下室から持ち出されたおもちゃが与えられているという。

■動機は2重生活か

 ポルツァー主任捜査官は監禁の動機について、これまで暮らしてきた家族との生活を、若く美しい女性との間で再現することにあったとする見方を示した。

 また、「現場の捜査官として今回の事件は非常に特異だといえる。非常に例外的な犯罪者だ」と語った。現在、現場の地下室では30人以上の警察官が捜査にあたっている。(c)AFP/Sim Sim Wissgott