【5月2日 AFP】(一部更新)オーストリア東部でヨーゼフ・フリッツル(Josef Fritzl)容疑者(73)が実の娘を24年間地下室に監禁し、性的暴行を加えて子ども7人を産ませていたとする事件で、同容疑者は被害者の娘らに対し、自分の身に危害が加えられるようなことがあれば地下室に毒ガスを流し込むと脅していたことが明らかになった。警察当局が1日、明らかにした。

 警察当局によると、フリッツル容疑者は逮捕直後に行われた尋問の際、自分の身に何かあったら地下室に毒ガスを流し込む計画があったと供述していたという。これに基づき、警察の専門家による捜査も行われているという。

 警察の広報官は「監禁していた娘や子どもたちがフリッツル容疑者を攻撃したりしないようにするための単なる脅しだった可能性がある」とし、専門家が「地下室にガスを流し込む仕組みになっているのかを検証する調査」を行っていることを明らかにした。

■地下室の真上に住んでいた人物が証言

 地元日刊紙プレッセ(Presse)は、監禁場所の地下室の真上に住んでいたという人物の証言を掲載した。

 Sepp Leitnerさんは1990年代の4年間、監禁場所の真上にあたる1階の狭いアパートを借りて住んでいた。当時、Leitnerさんは不在がちで洗濯機も持っていないにもかかわらず、電気代が高額なことを不思議に思っていたという。

 Leitnerさんは自室に加え、地下室の電気代も払っていることにはまったく気付かなかったという。フリッツル容疑者は元電気技師で、地下室には手の込んだセキュリティーシステムが構築されていた。

 Leitnerさんは「あの時あきらめずに電気代が高額な理由を追及していたら、恐らくもっと早く地下室の存在に気付いたかもしれない」と語った。

 さらに、Leitnerさんによると、飼い犬のサム(Sam)は地下室の異変に気付いていたらしく、入り口の前を通る時は必ず吠えたという。

「サムがそこを通ると決まって吠えだすから不思議に思っていたんだよ。散歩に行くのがうれしいんだとばかり思っていたけど」

 サムはフリッツル容疑者にも何かを感じていたという。

「なぜだかわからないけど、彼(フリッツル容疑者)を見るといつもうなり声をあげていたよ。サムは人に対してうなり声をあげることなどなかったのに」

 フリッツル容疑者は建物内のすべての部屋の鍵を所有しており、Leitnerさんやほかの入居者の部屋の台所からは、牛乳やパン、パスタなどの食品がなくなっていることがあったという。
 
 また、フリッツル容疑者は入居者たちに、アパートの広い庭や地下室近くに立ち入ることを禁止していたという。Leitnerさんは、地下室へは庭を経由して行けることから、今になって考えれば納得がいくと話している。

■メディア報道も過熱

 前週末に事件が発覚し詳細が明らかになるにつれ、オーストリア国内は騒然となっている。

 24年間監禁されていたエリザベス・フリッツル(Elisabeth Fritzl)さん(42)は、髪は真っ白で歯もぼろぼろになっており、年齢よりも老け込んでみえるという。エリザベスさんとともに救出された3人の子どもの最年長は19歳で、容体は安定しているものの集中治療室に収容されているという。

 被害者らが収容されている病院の壁をよじ登ろうとしたカメラマンを警官がたたいて押し戻すといった事態も生じていることから、当局はメディア各社に対し、被害者のプライバシーを尊重するよう要請している。(c)AFP/Deborah Cole