【4月29日 AFP】(一部更新)オーストリア東部で実の娘を24年間監禁し、性的暴行を加えて子ども7人を産ませていた事件で、同国の検察当局は28日、ヨーゼフ・フリッツル(Josef Fritzl)容疑者(73)が事件について自供したと発表した。

 検察の広報担当者がAFPに明らかにしたところによると、フリッツル容疑者は「地下室を建設し、実の娘と(娘に産ませた)3人の子どもを監禁していた」ことを認め、娘との性的関係についても認めているが、「強制ではなかったと主張している」という。

 捜査主任のFranz Polzer氏は同日、記者会見で「フリッツル容疑者は、強制的に娘を(地下室に)連れて行き、殴打し、彼女の意志に反して監禁し、また繰り返し性的暴行を加えていたことを認めた」と発表した。

 フリッツル容疑者は同日夕刻、当初事情聴取のために拘束されていた東部アムシュテッテン(Amstetten)から、ザンクトペルテン(St Poelten)近郊の裁判所に移送され、裁判所関係者がAFPに明らかにしたところによると、48時間以内に出廷することになっているという。フリッツル容疑者は、その後さらに数日間、事件について尋問を受ける。

 事件はフリッツル容疑者の娘のエリザベス・フリッツル(Elisabeth Fritzl)さん(42)が、アムシュテッテンのフリッツル容疑者の自宅にある地下室に1984年8月から監禁され、同容疑者の子ども7人を出産したというもの。このうち3人の子どもはフリッツル容疑者が養子として育てていた。フリッツル容疑者は妻のローズマリー(Rosemarie)さん(69)や当局に3人の子どもは娘が「自分では育てられない」との書き置きとともに玄関前に置き去りにしたと話していた。そのほかの子どもたちについては、1人は出産直後に死亡、5歳から19歳までの子どもたち3人は、エリザベスさんと地下室に監禁されたままで、生まれてから太陽の光を見たことがなかったという。

 フリッツル容疑者は、周囲の人々に娘はカルト教団に入団し行方不明だと話していた。

 捜査当局が公開した写真によると、エリザベスさんらが監禁されていた地下室は天井高がわずか1.7メートル、床面積50-60平方メートルほど。居間と寝室2部屋のほかは調理スペースとシャワーがあった。
 
 コンクリート製の表ドアは暗証番号を使って外側からしか開けることができず、エリザベスさんらの「外界」との接触は、ラジオ、テレビ、ビデオテープを通じてのみ可能だった。

 事件が明るみに出たのは、エリザベスさんの娘の1人(19)が19日に病院に搬送されたことがきっかけだったが、この際、治療のために病院側がテレビで母親の捜索を呼びかける映像をエリザベスさんは地下室のテレビで見ていたという。

 病院側の発表によると、現在、この娘の容体は安定しているという。

 一方、エリザベスさんや子どもたちは、現在、医療施設で心理面での治療を受けている。捜査担当官によると、エリザベスさんには白髪やしわも多く、実年齢より20歳ほど年上に見えるという。

 今後、捜査の焦点は、フリッツル容疑者が長期間、妻に知られずにどのようにエリザベスさんたちを狭い地下室内で生活させていたかや出産の状況などに移る。

 エリザベスさんは捜査当局に対し、エリザベスさんが11歳のころからフリッツル容疑者に性的虐待を受けていたことや、地下室に子どもたちと監禁されていたことを母親のローズマリーさんは全く知らなかったと話している。同様に近所の住民や自治体の社会福祉課職員も、事件には全く気付いていなかった。

 オーストリアでは、このほかにも、1998年にウィーン(Vienna)で通学途中に男に誘拐され、2年前に脱出するまでの8年間、地下室に監禁されていたナターシャ・カンプシュ(Natascha Kampusch)さんの事件やリンツ(Linz)近郊で、精神に障害を持つ母親に娘3人が7年間監禁される事件が起きている。(c)AFP/Philippe Schwab