【4月28日 AFP】デング熱の感染が拡大しているマレーシアで、デング・ウイルスを媒介する「ネッタイシマカ」の対策として遺伝子組み換え(GM)を施した蚊(カ)、数百万匹を試験的に放つ計画が進められている。一方、環境保護団体はこれに猛反発している。

 27日の現地紙ニュー・サンデー・タイムズ(New Sunday Times)によると、計画はマレーシア保健省と英国の昆虫バイオテクノロジー企業、Oxiterが共同で実施する。遺伝子を組み換えて致死遺伝子を持たせたオスのネッタイシマカを自然界のメスと交尾させ、幼虫を死滅させるというものだ。

 過去1年間の研究室での実験で有効性が確認されたため、早ければ2009年初頭にも、首都クアラルンプール(Kuala Lumpur)南部にある漁業が盛んなケタム(Ketam)島に「GM蚊」のオスを放つという。こうした試みは世界初だ。

■環境団体は「突然変異」を懸念し反対

 だが、マレーシアの「環境技術開発センター(Center for Environment Technology and Development)」のグルミット・シン(Gurmit Singh)所長は、「遺伝子を組み換えた生物がすべてそうであるように、いったん自然環境に組み込まれれば異種混交は避けられず、ネッタイシマカよりも性質の悪い突然変異体が生まれる可能性がある」と懸念する。

 マレーシア政府によると、同国ではデング熱感染者数が2003年から毎年16%の割合で増え続けている。2004年の死者数は史上最高の年間102人に達した。08年に入り1-3月の死者数はすでに25人、感染者は9800人以上にも上っている。

 デング熱を媒介するのは、メスの蚊に限られる。(c)AFP