【4月23日 AFP】ロシア軍戦闘機が、親ロシアでグルジアからの分離・独立を主張するアブハジア(Abkhazia)自治共和国上空でグルジア軍の無人偵察機を撃墜した事件は、北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty OrganizationNATO)に加盟し西欧諸国への接近を図りたいグルジアにとって、新たな戦いの前触れになるかもしれないとの見方がでている。

 この事件は、アブハジア上空で20日、グルジア軍の無人偵察機が撃墜されたもので、グルジア政府は、アブハジア領内のロシア軍基地から飛び立ったロシア軍の最新鋭機ミグ29(MiG-29)戦闘機が空対空ミサイルで撃墜したとして、ロシアを非難していた。

 グルジアはNATO加盟を、ロシアはその「裏庭」といわれる旧ソ連圏への勢力拡大を目指しており、今回の事件はグルジアにおける利害関係とプレーヤーが変化していることを示している。

 NATOがロシア軍と直接衝突することはまず考えられないが、専門家はグルジアと米国、そしてロシアとアブハジア自治共和国内の反グルジア勢力はそれぞれ緊密な関係にあるため、直接対決が絶対にないとも言い切れないと指摘する。

 グルジアの国際問題専門家Tornike Sharashenidze氏は「グルジアがNATOに近づくほど、ロシア・アブハジアとの関係は悪化する」と指摘する。さらに「もちろん、グルジアがアブハジアの挑発に乗らないことも重要だ。アブハジアで戦争が始まってしまうと、グルジアはロシアと戦うことになる」と語る。

 アブハジアでは1990年代、旧式の装備しかもたない地元やグルジアの軍閥が権力争いを繰り広げていたが、今では状況が大きく変わってしまった。グルジア軍は米軍によって再建され、アブハジアの反グルジア勢力はロシア軍から事実上公然と支援を受けている。

 グルジア軍の装備の変化は今回の事件でも明らかだ。無人偵察機を撃墜したと主張しているアブハジアの反グルジア勢力は、残がいから判断すると2006年にイスラエルのElbit Systemsが製造した中型の無人偵察機(UAV)だとしている。(c)AFP