【4月22日 AFP】マレーシアのボルネオ(Borneo)島に住む小型のアジアゾウ「ボルネオゾウ」は、数世紀前にインドネシアのジャワ島(Java Island)で絶滅したゾウの生き残りかもしれない。世界自然保護基金(World Wildlife Fund for NatureWWF)が17日、このような研究結果を発表した。

 研究は、アジア各地に生息するアジアゾウより小型でおとなしいこのボルネオゾウが、かつての統治者によってボルネオ島に持ち込まれ、ジャングルに放置されたとしている。数百年前、ゾウは統治者同士の贈り物としてアジア中を移動することがしばしばあったというのだ。

 ボルネオゾウがどこで生まれ、なぜボルネオ島の1部にしか生息していないのかについては、長い間謎とされてきた。現在ではマレーシアのサバ(Sabah)州を中心に、野生では1000頭程度しかいないとみられている。

 研究では、ボルネオゾウが太古からボルネオ島に住んでいたという考古学的証拠はないとしており、これはゾウが数世紀前にフィリピン・スルー(Sulu)諸島のスルタンによって持ち込まれたとする仮説を裏付けるものだ。

 研究の著者の1人、WWFのJunaidi Payne氏は「繁殖力のある1対の雌雄が適切な生息地に妨害を受けることなく残されれば、300年以内に2000頭まで増えることは理論的には可能だ」と説明し、それが実際に起こったことだとの見方を示している。

 ボルネオゾウは丸っこい体つきで、大陸に住むアジアゾウの雄の体高が約3メートルなのに対し、2.5メートルと小型。顔は小さく角張っていて、尾は地面に着きそうなほど長く、牙はまっすぐに伸びている。

 攻撃的で手なずけられることがめったにないアフリカゾウに比べ、アジアゾウは一般的に協調性があり働き者として知られるが、ボルネオゾウの気質はさらに穏やかだ。

 ボルネオゾウがDNA検査により新たな亜種であることが判明したのは、つい最近の2003年のことだ。

 WWFが行った衛星追跡により、ボルネオゾウは低地に住むのを好むことが判明しているが、その生息地はゴムの木やパーム油のプランテーションのために、徐々に失われつつある。

 アジアのゾウやサイに関するプログラムをとりまとめるクリスティー・ウィリアムズ(Christy Williams)氏は「(ボルネオゾウが)ジャワ島から来たのだとすれば、例え少数でも絶滅間近と考えられている特定種を保護する取り組みの価値が実証されることになる」と指摘する。「絶滅の危機にひんしているスマトラサイやジャワサイの生息数を増やすために、より好ましい生息地に移す取り組みを提案する勇気が沸く。このような取り組みはアフリカ南部のシロサイやインドサイではうまくいった。今回、ジャワ島のゾウでもうまくいったらしいことが分かった」と語る。(c)AFP