【4月21日 AFP】ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luis Inacio Lula da Silva)大統領は20日、19世紀にブラジルで自由人となり本国ガーナに帰還した元奴隷たちの記念館、「ブラジル・ハウス(Brazil House)」の落成式に出席した。

 大統領は、地元ダンサーらの熱烈な歓迎を受けたあと、「彼らはすべてをあきらめなければならない身分でありながら、尊厳、平和、自由とともに生きるという夢だけは決してあきらめなかった」と、今は亡き元奴隷(現地語で「タボン(Tabon)」)たちをたたえた。また、タボンの末裔(まつえい)らで構成されるタボン・コミュニティとブラジルとの古くからのつながりを指摘した。  

 19世紀、ブラジルで自由人となったアフリカの奴隷たちは子どもを連れて西アフリカに帰国した。その数は、1835年のバイア(Bahia)の反乱に参加した多くの奴隷たちが国外追放された後に増加した。

 ブラジルで自由を勝ち取った奴隷たちは、ポルトガル語を自由に操りプランテーションの運営にも精通していたことから、ブラジルの奴隷たちの中では「エリート」だった。だが、リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)の大学の調査によると、ガーナに帰国した彼らは皮肉にも、ブラジルの商人たちと結託して奴隷貿易に従事するようになった。

 その奴隷貿易のなごりである首都アクラ(Accra)の海沿いにある「ブラジル・ハウス」は、ルラ大統領が2005年に同国を訪問した際に改装が約束され、このほどブラジル企業の支援のもと記念館に生まれ変わった。(c)AFP