【4月17日 AFP】約3万年の沈黙を破り、ネアンデルタール人(Neanderthal)が科学の力によって再び声を取り戻した。

 米研究チームがネアンデルタール人の喉頭(こうとう)の模型を作成し、どのような音声を発していたかを再現したという研究結果が16日、英科学誌ニュー・サイエンティスト(New Scientist)電子版に発表された。

 研究を行ったのは、米フロリダ・アトランティック大学(Florida Atlantic University)の人類学者ロバート・マッカーシー(Robert McCarthy)氏率いる研究チーム。

 チームはネアンデルタール人の声を再現するために、フランスで発見された化石を元に、喉頭(こうとう)の模型を作った。模型にはコンピューター電子音合成装置が含まれており、ネアンデルタール人がどのように「e」の音を発音したかを再現し、現代人が発する同じ音と比較することができる。

 前年10月に英科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に発表された論文では、ネアンデルタール人がこれまでに言語と関連づけられた唯一のヒト遺伝子を持っていたことが示されている。これは、ネアンデルタール人が少なくとも言語を習得する遺伝的条件を備えていたことを意味する。

 ところが専門家の間では、ネアンデルタール人がうなる以上の言葉を発するために必要な身体的機能、つまり舌筋や唇とつながる神経を持っていたかどうかが疑問視されている。

 ネアンデルタール人の声道には会話の基礎となる発音能力の一部が欠如していたため、会話でのコミュニケーションには限界があったと、マッカーシー氏は指摘する。

 現生人類に最も近い近縁種のネアンデルタール人は欧州、中央アジア、中東の1部地域に17万年にわたって生息した後、約2万8000年前またはそれ以前に絶滅した。

 絶滅の謎については、現生人類のホモ・サピエンス(Homo sapiens)によって絶滅させられたか、ホモ・サピエンスと異種交配したかという、2つの主要な説がある。(c)AFP

英科学誌「ニュー・サイエンティスト」の公式ウェブサイト(英語)