【AFP】フランス屈指のワイン生産者ベルナール・マグレ(Bernard Magrez)氏(73)にとって、3月は忙しい月だった。富士山の斜面に6ヘクタールのブドウ園を購入する少し前には、チリに220ヘクタール、フランス南部に2つの小さなブドウ園を購入したのだ。これで7か国に30以上のブドウ園を所有することになる。次のターゲットはイタリアだ。

「イタリアは最高品質の、もうかるワインを作るのには良い場所だ。日本にブドウ園を買ったのも同じ理由だ。最高品質の白ワインを作ることができる」とマグレ氏は語る。

 マグレ氏は今年、有賀雄二(Yuji Aruga)さんが営む「勝沼醸造(Katsunuma Winery)」との提携により、最初の白ワイン「Magrez-Aruga Koshu Isehara 2007」を発売する。最初の販売は国内のみ。

 マグレ氏は「ワインの生産方法はボルドーと似ているが、ブドウの栽培方法は全く違う」と語る。湿気の多い日本では、ブドウ棚により湿気を減らす方法をとるのだという。

 最高品質の白ワインを作るほか、日本がボルドーワインの販売市場として成熟していることも、日本にブドウ園を購入した理由の1つだ。日本は2007年には1億1300万ユーロ(約181億円)相当のボルドーワインを輸入している。「ベルナール・マグレ」ブランドのワイン販売量を増やすことが狙いだ。

 米国のワイン評論家ロバート・パーカー(Robert Parker)氏からの全般的な評価も良く、年間販売額約4000万ユーロ(約64億円)を誇るマグレ氏のワインとはいえ、どこでも人気があるという訳ではない。

 英国のワイン販売の老舗ベリー・ブラザーズ&ラッド(Berry Brothers and Rudd)のバイヤー、サイモン・ステープルズ(Simon Staples)氏は、マグレ氏のスタイルを大事業化し過ぎでモダン過ぎると評している。

 このような批判のほか、マグレ氏がボルドーの反逆者、不作法でビジネス中心のワイン生産者と呼ばれることはよくある。相続するのではなくゼロからビジネスを立ち上げた点でも、普通とは違うことを自身も認めている。

 仕事に対する要求も高く、従業員の入れ替わりも激しい。従業員にはいつでも呼び出しに応じられることが求められ、若い責任者の登用も目立つ。

 退職して8年たっていてもおかしくない年齢だが、ある点ではスタートしたばかりだともいえる。

 新たなブドウ園、前年パリ(Paris)とボルドーにオープンしたマグレブランドのワインのみを販売する2つの店舗、パプ・クレマン(Pape Clement)のレストランだけでは飽きたらず、所有する地所にホテルを開業することを計画しているのだ。事業から退く計画?--彼の答えは「ない」。(c)AFP/Sophie Kevany