【4月13日 AFP】(4月14日写真追加)ニジェールの元奴隷の女性が、奴隷制を禁止する十分な措置をとっていないとして、ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)共同体裁判所でニジェール政府の責任を問う裁判を起こした。裁判所の判断は同国の反奴隷運動の行方に大きな影響を与えそうだ。

 訴えを起こしたのはAdidjatou Mani Koraouさん(24)。12歳のときに366ユーロ(約6万円)相当の価格でトゥアレグ(Tuareg)人の奴隷商人に売られ、やがてニジェール中部に住む伝統医療師に5番目の妻として買われたという。7日に始まった審理でKoraouさんは、「買われた」身分であることを夫から常に言い聞かされ、虐待を受けてきたと証言した。

 ニジェールの奴隷制が表面化したのは、つい最近の2001年だ。首都ニアメー(Niamey)で開催された国際労働機関(International Labour OrganisationILO)のフォーラムで、地元の首長たちが一部地域で奴隷制が存続していることを認め、廃絶に向けて闘っていると述べたのだ。

 ニジェール政府は2003年、刑法を改正して奴隷の所有を禁止した。これにより、少なくとも法律上は、違反者は最高で30年の禁固刑を受ける可能性がある。それにもかかわらずKoraouさんが奴隷として所有され続け、また慣習法で正当化されているのは政府の落ち度だと原告側は主張している。

 一方で政府側の弁護士は、「奴隷制は歴史的な現象。政府に責任があるという考え方はナンセンスだ」と話す。

■人権団体と政府のかけひき

 10年以上にわたり奴隷制の廃止を訴えてきた国内唯一の反奴隷グループ「ティミドリア(Timidria)」(現地のタマシェク(Tamashek)語で「友愛」の意)も、判決の行方を見守っている。Koraouさんの訴えが認められれば、奴隷制度の存在を否定し続けてきたニジェール政府の威信に傷が付く。逆の場合は、ティミドリアは解散に追い込まれるだろうとささやかれている。

 ニジェール政府はこれまで、ティミドリアの活動に目を光らせてきた。代表のIlguilas Weilaさんは、マリ国境に近いトゥアレグ人の村から7000人の奴隷が解放されたことを祝うセレモニーを、ロンドンに本部を置く国際反奴隷協会(Anti-Slavery International)の支援を受けて企画したとして、2005年の4月から7月まで収監された。「そのようなセレモニーはニジェールの国際的イメージを損なうから」というのが政府の言い分だ。

 ニジェールの奴隷制に関して「A Taboo broken(破られたタブー)」という本にまとめたMoustapha Kadiさんは、「ニジェール政府寄りの判決が出たとしても、ニジェールには奴隷制がないということにはならない」と語った。

 ティミドリアは2003年、国内の奴隷数は87万人を超えるとする調査結果を報告している。政府はこれを無視し、2007年11月に独自の調査を開始したが、結果はまだ明らかにされていない。(c)AFP

国際反奴隷協会のサイト(英語)