【4月8日 AFP】森と湖に囲まれた人口8万人のスウェーデン南部の町ヴェクシェー(Vaxjo)は、世界でも先進的な環境保護政策をとっていることで知られ、各国から多くの視察団が訪れる。

 たとえば全エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合でみると、欧州連合(EU)が2020年までに20%まで引き上げる目標を掲げる中、ヴェクシェーではすでに50%を超えている。暖房利用に限ればその割合は90%を誇る。

 1人当たりの二酸化炭素(CO2)排出量は1993年から2006年の間に30%削減。2010年までに50%、2050年までに70%削減することが目標だ。これは、「2020年までに1990年レベルから20%削減」というEU目標を大きく上回る。

 その取り組みを欧州委員会(European Commission)に認められ、ヴェクシェーは2007年、欧州再生エネルギー賞(Sustainable Energy for Europe award)も受賞した。

 ヴェクシェーの具体的な取り組みをみてみよう。

■完全木造の集合住宅

 ヴェクシェー湖(Lake Vaxjo)のほとりでは、完全木造の集合住宅の建設が進められている。8階建ての集合住宅2棟がすでに完成し、現在3棟目を建設中。プロジェクト全体では、今後10-15年の間に1200戸の集合住宅が誕生する。

 関係者はプロジェクトを通じ、同国が誇る豊富な木材資源が未来の建材であること、コンクリートや鋼鉄と違って生産エネルギーが不要なため、環境保護の観点からも優れていることを示したい意向だ。

 プロジェクトに参加する建築家の1人は「木材は唯一の再生可能材料だ」とし、木材がコンクリートと違いCO2を吸収する点を指摘した。

 集合住宅には、床や壁、天井からエレベーターに至るまで、すべてに木材を使用。火災対策として、スプリンクラーが各所に設置される。

■家庭用暖房にはバイオ燃料

 湖の対岸にはエネルギー源の98.7%をウッドチップ、樹皮、枝などの木材でまかなう発電所があり、5-8万人の周辺住民にぬくもりを提供している。

 この発電所は1979年までは燃料を石油のみに頼っていた。しかし1980年の第2次石油危機をきっかけに、独立したエネルギー源の重要性を認識。バイオ燃料を導入し、それが根付いた。

■次世代バイオ燃料の研究も

 欧州北部最大の木造建築物として知られるヴェクシェー大学(Vaxjo University)では、欧州共同研究の一環として、次世代バイオ燃料「ジメチルエーテル(DME)」の研究・開発が進められている。

 DMEは、バイオマスや森林伐採時に発生する枝や切り株などを利用して作られる。Anders Baudin教授によると、エネルギー原料としての伐採くず利用では最も効率的な手法だという。

 Baudin教授によれば、10年以内にはDMEの大量生産(年40万トン)が可能になる見通し。それまでに市内の全公共交通がDMEを燃料に、全自家用車が電気を動力に利用するようになるのではないかと期待を寄せている。(c)AFP/Sophie Mongalvy