【4月1日 AFP】前週末に大統領選挙が実施されたジンバブエ。多民族で構成される点では同じでも、選挙の結果をめぐっては、暴動により多数の死者が出たケニアの二の舞は回避できそうだ。

 ケニアでは前年末の大統領選後、結果をめぐって民族間対立にまで発展。これまでに約1500人が犠牲となっている。ジンバブエの過去の経緯を考えると、選挙後に同様の暴動が懸念されるのも当然だ。

 だが、少数派のヌデベレ人が多数を占め、ロバート・ムガベ(Robert Mugabe)現大統領の支持層が薄いマタベレランド(Matabeleland)州においてさえ、「『民族』が選挙のカギを握る」と考える人はほとんどいない。

 政治アナリストのTakavafira Zhou氏も同意見だ。国内では人口形態の変化が進んでおり、主流民族で容易に地域を分けることは容易でなくなっている。中でもマタベレランド州は、現在では多民族が共生する。「選挙では(民族ではなく)人物本位で選ぶようになるだろう」(Zhou氏)

 5期目を目指すムガベ大統領は最大民族ショナの出身、有力対抗馬の民主変革運動党(Movement for Democratic ChangeMDC)率いるモーガン・ツァンギライ(Morgan Tsvangirai)議長、シンバ・マコニ(Simba Makoni)元財務相も、ショナ人だ。

 国内第2の都市ブラワヨ(Bulawayo)の野党幹部は、「マタベレランド州の人々も経済的苦境にあえいでいるが、だからといって最大派ショナ人への反発は見られない。自分たちの州が政府から公平な扱いを受けていないという感情を誰もが持っており、皆が政府への反対票を投じるだろう」と語る。

 同州では1980年代はじめ、反政府デモの鎮圧で推定2万人が殺害される事件があった。このとき特定の民族だけが殺害されたと見るむきもあるが、ブラワヨの人権活動家は事件について「政府は特定の民族よりも、マタベレランドそのものに強い差別意識を持っていた」と分析する。「マタベレランドでは、民族主義ではなく地域主義が働いている」

 地元の大学講師は、「国のすべてが腐敗している」ために今回の選挙で民族が焦点になることはないと話した。(c)AFP/Susan Njanji