【3月25日 AFP】毎年秋になると、黒とだいだい色のチョウ、オオカバマダラ(Monarch butterfly、学名Danaus plexippus)数百万匹が、米国西部およびカナダのロッキー山脈(Rocky Mountains)からメキシコ中部の越冬地に向けて、北米大陸を大移動する。

 チョウの群れはまだ見たこともない土地に向けて、4500キロにもわたる長距離を移動し、卵を産む。1日80キロ、40か所以上の土地で休みながら、約2か月をかけてメキシコ中西部ミチョアカン(Michoacan)州の火山丘陵まで飛行する。

 メキシコの国家自然保護区委員会(National Commission for Natural Protected AreasCONANP)はオオカバマダラの移動・越冬習性について多数の研究を発表してきたが、チョウがなぜこのような本能を持っているのかについては、正確には解明されていない。

   「時にはチョウの群れが森林に到着するのを見ることができる」とロザリオ(Rosario)にある同国最大の保護区、オオカバマダラ保護区(Monarch Butterfly Reserve)の関係者Ricardo Adaya氏は語る。

 しかし、ロッキー山脈からメキシコに移動するチョウは5世代に1世代だけだ。この世代は最長6-7か月と、最も長生きをする。Adaya氏によると、チョウは将来メキシコに到着する世代のために、住みかの目印として、樹木や地面にベタベタした膜を残すという。雄は交尾の後、雌は産卵の後、間もなく命を終えることが多い。チョウたちは数世代にわたり春までにカナダに向けて移動し、最終的には次の秋にメキシコに戻る。

 あまりに大量に集まるため、時には木全体を覆いつくし、枝がしなることもあるという。暗い雲のように群れて飛んだり、海抜3000メートルほどの高度を木から木へ羽ばたいたりする。

 地元住民の中には、この壮大な光景を説明するために、昔からの言い伝えを持ち出す人もいる。300ヘクタールのChincua保護区を監視するCarmen Martinez氏は「地元に伝わる伝説では、チョウは生きている人の元を訪れる亡くなった人の魂だとされている」と語る。11月のチョウの飛来がカトリック教の諸聖人を祝う「万聖節(All Saints Day)」と重なることも、チョウをとりまく神秘性を高めているようだ。

 一方、チョウの保護区は深刻な脅威にさらされている。違法伐採により、チョウの生態系が奪われてしまう恐れがあるのだ。

 これに対し、主にチョウ関連の観光業で生計を立てている地元住民たちは、森林監視チームを結成し、違法伐採者の存在を警察に警告するなどの対策をとっている。(c)AFP/Jennifer Gonzalez