【3月16日 AFP】中国チベット(Tibet)自治区の首都ラサ(Lasa)で中国政府に対する僧侶らの抗議行動から暴動へと発展した事態を受け、亡命中のチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世は16日、中国政府の対応を「恐怖による統治」、「文化的ジェノサイド」などと非難し、チベットの状況に関する国際調査の必要性を訴えた。

「彼ら(中国政府)は平和を装うために武力行使に頼っているだけだ。その平和とは、恐怖による統治を利用した力によってもたらされている」。ダライ・ラマは同日、中国政府の統治に対する蜂起に失敗した1959年のチベット動乱以降、亡命先としているインド北部ダラムサラ(Dharamshala)で会見し、何らかの国際機関による調査をまず行ってほしいと懇願した。

「故意によるものか偶発的なものかにかかわらず、起こっている事態は何らかの文化的ジェノサイドだ。差別が存在し、チベット人は自分たちの土地にいながら、二級市民として扱われるのが常だ」とも訴え、「信頼に足るグループによる現地調査が行われるべきだ」と強調した。また、中国政府は自治区においてチベット族を少数派とする目的で、漢族を大量に移住させていると糾弾した。

■五輪ボイコットは否定

 しかし、他の多くのチベット亡命者らが8月に開催される北京五輪のボイコットを要求している中、ダライ・ラマは「中国人は五輪を誇りと感じなければいけない。中国は五輪開催を招くにふさわしい」と述べた。しかし「良き開催国である必要がある」と釘も刺した。

 ダライ・ラマの談話が伝わる数時間前、中国政府はチベットにおける「人民戦争」を宣言した。また目撃者らによると15日にはラサ市内で繰り返し銃声が聞こえ、中国軍は大幅な治安強化を行っているという。

 ダライ・ラマは中国政府に対し、「われわれが求めているのが分離でないことは、誰もが知っている」と述べ、チベット亡命政府の要求は独立ではなく自治であり、それを認めよと政府に要求し、亡命政府の運動は非暴力だとも強調した。

■「これは人民の運動だ」

 一方、チベットの暴動を終結させることができるかと問われたダライ・ラマは、そのような力は自分にはないと述べ「これは人民の運動だ。自分は人民に仕える者だと思っている。人々にこれをするな、あれをするなと言うことはできない。しかし、誰もがわたしの信条は完全な非暴力であることを知っている。暴力とは自殺行為と変わらない」と語った。

 中国政府は今回の暴動についてダライ・ラマの関連を非難しているが、ダライ・ラマ本人は否定し「中国は今回の問題を起こしたのはわたしだと非難しているが、わたしではない。わたし自身はチベットの人々の広報官だ」と述べた。

 また、「中国の研究者や政府高官の中にもわれわれの『中庸の道』を個人的に支持する人がいる。真の調和は、恐れから解き放たれた、信頼に基づいた心から生まれなければならない」とし、チベットへの連帯を示す中国人の数が増えていると言及した。(c)AFP/Nicolas Revise