【3月11日 AFP】北極圏で生まれた数百頭のワモンアザラシの赤ちゃんが、飢えと寒さによる死の危機にひんしている。背景には地球温暖化の影響で北極圏の氷が急速に解けていることがある。世界自然保護基金(World Wildlife Fund for NatureWWF)が10日、明らかにした。

 WWFは声明で「一部の地域では、過去数週間に生まれた子どもが1頭も生き延びることができない恐れもある」と警告。前月と今月に生まれた合計約1500頭のワモンアザラシのうち、数百頭が危険な状態にあるという。

 ワモンアザラシは生後数週間は氷床に掘った巣穴で過ごす。その氷が早く解け過ぎれば、生きるために必要な脂肪の層を蓄える前に海中に投げ出され、飢えと寒さで苦しみながら命を落とすことになるのだ。

 WWFによると、今冬の北極圏の氷は過去300年で最も少ないという。

 とりわけ危険なのは、フィンランド南西沿岸のフィンランド湾(Gulf of Finland)とリガ湾(Gulf of Riga)に住むアザラシの赤ちゃんだが、スウェーデンとフィンランドの間のボスニア湾(Gulf of Bothnia)の氷層も例年より薄い。

 WWFの推計では、北極圏に生息するワモンアザラシの数は100年前には18万頭だったが、現在では7000-1万頭に減っている。

 科学者らによると、北極圏は地球のほかの地域の2倍の速さで気温が上昇。これにより自然の住みかが解けてなくなれば、ホッキョクグマをも絶滅の危機にさらしかねないという。(c)AFP