【3月9日 AFP】マフィアの故郷として知られるシチリア(Sicily)島最大の都市パレルモ(Palermo)で8日、「ピッツォ(Pizzo)」と呼ばれるマフィアの「みかじめ料」の支払いを拒否する企業の商品だけを販売する初めての店がオープンした。

■小さな店の大きな志

 この店を開いたのは、ファビオ・メッシナ(Fabio Messina)さんとバレリア・ディレオ(Valeria Di Leo)さん。2人はビジネスパートナーであり、恋人同士でもある。

 55平方メートルの狭い店内には、30社が生産する食用油、はちみつ、パスタ、ワイン、工芸品、宝飾品などが所狭しと陳列され、好奇心に駆られた通行人たちが店内を物色する。

「政治的援助は何も受けていないし、期待もしていない」と言い切るメッシナさんは「買い物する額は小さくても、変化を起こすためのメッセージは発信できる」と話す。

■変化求め草の根レベルで運動開始

 シチリアでは4年前、学生たちを中心とする草の根レベルの「みかじめ料」反対運動が始まった。当時、パレルモ市内では「脅迫者に金を払う者に品格なし」と書かれた小さな張り紙が町中に張り出された。

 反対運動はやがて「アディオピッツォ(Addiopizzo、『さようならピッツォ』の意)」と呼ばれる団体を生んだ。メッシナさん、ディレオさんをはじめとする「みかじめ料」の支払いを拒否する事業主が加入している。

■マフィアの違法収入は毎年1600億円

 今年1月に発表された研究によると、「みかじめ料」などシチリア島のマフィアの違法収入は毎年10億ユーロ(約1600億円)に達すると見られている。この額は同島の総生産の1.3%に当たる。

 経済紙「ソレ24オレ(Sole-24 Ore)」がパレルモ大学(Palermo University)の調査として報じたところでは、業種別の「みかじめ料」は月額平均、小売店が457ユーロ(約7万2000円)、ホテルやレストランが578ユーロ(約9万1000円)、建設業では2000ユーロ(約31万5000円)に上るという。

■運動広がれば店じまい?

「どの店も『みかじめ料』拒否を打ち出したら、うちも商売あがったりだね」と明るく笑うメッシナさんだが、それでも「誰もが拒否してくれるよう願ってるよ」と真剣なまなざしで語った。(c)AFP