【3月7日 AFP】国際宇宙ステーション(International Space StationISS)で日本初の有人施設となる「きぼう」日本実験棟の1部が11日、スペースシャトル「エンデバー(Endeavour)」によって打ち上げられる。

「きぼう」は全部で3回に分けて打ち上げられ、初回となる今回は船内保管室が運ばれる。

 世界2位の経済大国でありながら資源の乏しい日本は、その将来を技術力に賭けている。宇宙航空研究開発機構(Japan Aerospace Exploration AgencyJAXA)有人宇宙環境利用プログラム推進室参事の福田義也(Yoshiya Fukuda)氏はAFPに対し、「日本は技術で戦うしかない。1番手で走るのでなくても、2番手くらいにいないと通用しない。資源のない、年寄りばっかりの国でどうするのか」と語る。

 日本は2020年までに月に宇宙飛行士を送ることを目標にしている。2003年には隣国中国がこれを達成している。

 米国の当時の大統領ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)氏が主導するISS建設プロジェクトに、日本が参加を決めたのは1985年。プロジェクトはその3年後に始まったが、スペースシャトルの爆発事故や参加国の資金繰りなどを背景に、実際にISSの組み立てが始まったのは1998年になってからだった。現在の参加国・地域はカナダ、欧州、日本、ロシア、米国など。

 今回エンデバーが運ぶ船内保管室は、最終的には実験用の試料や装置を保管する。エンデバーには土井隆雄(Takao Doi)宇宙飛行士(53)が搭乗し、16日間のミッションの中で保管室をISSに運搬・設置する。

 土井氏は「宇宙に初めて日本の家ができる。努力と投資にあった結果が出せるかどうか、がんばります」と語る。

 5月には別のスペースシャトルによって、筒型で長さ11.2メートルの船内実験室とロボットアームが打ち上げられる。

 さらに、2009年3月には船外実験プラットフォームなど残りの部分が打ち上げられ、「きぼう」の組み立てが完了する予定だ。同プラットフォームは宇宙空間に直接さらされており、高真空、微小重力、太陽エネルギー、放射線の下での実験を行う。同プラットフォームは日本特有の設備で、米国、ロシア、欧州の実験棟には見られない。

 約200万個の部品からなる「きぼう」での実験は、今年7月ころから始まる見通しだという。

 微小重力下では純粋結晶を作ることが可能となる。純粋結晶は革新的な製薬や、半導体その他の新製品に使われる材料の開発に利用される。

 日本はISSプロジェクトへの参加を決めて以来、6800億円の資金を投じてきた。うち980億円が「きぼう」の開発・製作費だ。

 福田氏は「子供に夢を与えられる。お金では買えないものだ」と、長期にわたるプロジェクトがお金だけではないことを強調する。

 子どもの理科離れが懸念される中、「きぼう」関連のたくさんのイベントが企画されている。土井氏はISSの中で3またのブーメランを投げ、微小重力の中でどのように飛ぶかの実験を行う。このような実験はこれまでに行われたことはない。

 12月打ち上げ予定のスペースシャトルに搭乗し、「きぼう」の組立て・運用作業を行う予定の若田光一(Koichi Wakata)宇宙飛行士のために、スポーツ用品メーカー「アシックス(Asics)」は無重力空間用の運動靴を開発した。宇宙用の運動靴は足袋のようにつま先部分が2つに分かれているのが特徴だ。

 宇宙食の分野でもインスタントラーメンやカレーを開発するなど、日本は最前線を走っている。福田氏は「スシが宇宙に登場するのも時間の問題だと思う」と語っている。(c)AFP/Miwa Suzuki