【3月3日 AFP】コウモリが果汁を吸う際、昆虫と同じ方法を使って空中にとどまっていることが分かった。スウェーデン・ルンド大学(Lund University)の研究チームが2月28日、米科学誌サイエンス(Science)に発表した。

 研究チームが観察したのは、中南米に生息するパラスシタナガコウモリ(Pallas long-tongued bat)と呼ばれる、体重約12グラム、体長約9センチ、翼幅約24センチのコウモリ。巨大な風洞内の餌場にはちみつ水を置き、霧、レーザー、高速度カメラを使って、コウモリがどのように飛ぶかを正確に観察した。

 その結果、コウモリが翼を下向きに動かすとき、翼の上部に「前縁渦流」と呼ばれる小さな空気の渦ができていることが分かった。この渦流により、単に翼をはためかせるのと同程度のエネルギー消費で、体を持ち上げ、空中にとどまることができる。渦流が空中にとどまるための揚力の40%を負担しているため、これがなければ果汁を吸うために空中にとどまることはできないという。

 コウモリは翼の皮膜に収められた指を航空機のフラップ(下げ翼)のように使い、翼の向きを変えたり空中にとどまるために必要な揚力を生み出したりする。

 研究を主導したAnders Hedenstrom氏は「この渦流を生み出すためには、翼の表面を巧妙に調整しなければならず、それを維持するためには非常に微妙なコントロールが求められる。翼の上端にある前縁の後ろから出される剥離バブルのようなもので、翼を動かす間は翼表面に付着し続ける。これは非常に重要なことで、もし渦流が壊れてしまえば乱気流が起き、揚力が失われてしまう」と説明する。

 このようなしくみはこれまで昆虫で観測されているほか戦闘機などにも応用されているが、コウモリや鳥類で観測されたのは初めてだという。(c)AFP/Mira Oberman