【2月28日 AFP】2001年にアフリカ中部チャドの砂漠地帯で発見された最古のヒトとされる「サヘラントロプス・チャデンシス(Sahelanthropus tchadensis)」の頭がい骨の化石は680万から720万年前のものだとする研究結果が、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)3月4日号に掲載される。

 現地の言葉で「生命の希望」を意味する「トゥーマイ(Toumai)」と名付けられたこの化石は、フランスのミッシェル・ブルネ(Michel Brunet)博士率いる調査チームが発見した。頭がい骨、あごの骨、歯がほぼ完全な形で残っており、これがヒトの祖先なのかどうかについては、激しい議論が交わされてきた。

 トゥーマイの頭がい骨はヒト科の動物にしてはひしゃげすぎており、ヒトとして十分な脳の容量を持っていなかった上、身長は歩くチンパンジー程度の120センチしかなかったとの批判もある。つまり、トゥーマイは単なる類人猿だというのだ。

 トゥーマイがヒトの祖先であることを支持するグループは、コンピューターの3次元復元技術を用いて、頭がい骨の構造が明らかにゴリラやチンパンジーのものとは違い、直立2足歩行が可能だったことを示した。

 トゥーマイが本当にヒトの祖先だったとしたら、類人猿とヒトを分ける進化は、これまで考えられていたよりずっと早く起こっていたことになる。また、トゥーマイが生存していた年代を特定することは、進化の地図を描き直す上で重要な鍵となる。

 ブルネ博士は「放射線年代測定データは、ヒト科の動物の初期段階での進化を立証する上でも、分子時計を新たに調整する上でも、重要な基準となる」とし、「サヘラントロプス・チャデンシスが、類人猿とヒトの分化が起こったのは間違いなく800万年前以降ではないことを立証する」と指摘する。

 さらに、トゥーマイはおそらくこの分化時期にかなり近い時期に生存しており、最近示された「類人猿とヒトの最終的な分化は630万年前に起こった」とする説と相いれない結論付けをしている。

 もしトゥーマイがヒトとして認められれば、意味深い。

 トゥーマイが発見されたグレートリフトバリー(Great Rift Valley)の西約2500キロがヒトの祖先の住みかだったとすれば、ヒト科の動物はこれまで考えられていたよりずっと広い範囲の東アフリカから、ずっと早くから生存していたことになる。さらに、類人猿と共通の祖先から分化した後、ヒトが急速に進化したことも意味する。

 ヒト科の動物は解剖学上、20万年前に出現した現代の人類の祖先と考えられている。しかし、サヘラントロプス・チャデンシスと高度な頭脳を持ったホモサピエンスとの正確な系統の区分はまだ明確にはなっていない。(c)AFP