【2月27日 AFP】たった1本の毛髪で、その人の過去の足取りがわかるとするユタ大学(University of Utah)の研究結果が、25日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。容疑者のアリバイ調査や死体の身元確認といった鑑識への応用が期待される。

 同大の研究チームは、全米で水道水および美容院で切られた髪の毛を採取・分析した。その結果、地域ごとに化学成分に顕著な違いが見られることが判明、その人が飲む水の成分との関連が確認された。

 チームは、各地で採取した水と髪のサンプルを基に、水素と酸素のアイソトープの比率別に色分けした米国地図を作成。この地図により髪の持ち主が滞在していた大体の場所はわかる。また、髪の長さにもよるが、過去数週間から数年までの居場所を追跡することが可能だという。

 チームに参加した地球化学者のThure Cerling氏は、「人は、食べたものと飲んだもので構成される。それが毛髪にも記録されているということだ」と語る。

 ユタ州では、すでにこの方法が捜査に活用されている。2000年10月にソルトレーク郡で発見された女性の部分遺体の身元確認の際、髪の毛から「過去2年間にアイダホ州、モンタナ州、ワイオミング州内を移動して、その後オレゴン州かワシントン州に入った可能性がある」ことが判明したという。

 捜査を担当したトッド・パーク(Todd Park)刑事は「驚くべき方法だ。(事件の捜査は)ピースを1個ずつ探してパズルを完成させていくようなものだが、この方法で間違いなくピースを手に入れることができる」と語った。

 またこの技術は、食中毒などの病気の発生源や、かなり古い時代のヒトや動物の移住、薬物の生産地などの特定にも活用できるという。(c)AFP