第80回アカデミー賞外国語映画賞は『ヒトラーの贋札』
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【2月25日 AFP】(一部更新)24日に開催された第80回アカデミー賞(80th Academy Awards)授賞式で、『ヒトラーの贋札(The Counterfeiters)』(オーストリア)が外国語映画賞を獲得した。
ステファン・ルツォヴィツキー(Stefan Ruzowitzky)監督が手掛けた同作品は、第二次世界大戦中、ナチス(Nazis)・ドイツがベルリン(Berlin)北部のザクセンハウゼン(Sachsenhausen)強制収容所で実施した偽造紙幣製作の実話を映画化したもので、原作はこの偽札製造に2年間携わった生存者、アドルフ・ブルガー(Adolf Burger)氏の著書。過酷な環境の収容所の中でもわずかながらのぜいたくが許された特別施設で生活しながら、偽札作りを強要されるユダヤ人たちを通して「倫理」と「生存」に対する疑問を投げかけている。
139人の印刷技師や贋作師たちは、当時破綻状況にあったナチス・ドイツの作戦で敵国英国経済をかく乱させるために、偽のポンドやドル紙幣1億3100万ポンド相当分の製造を託されたのだった。
■生存と正義の葛藤、あいまいとなる犠牲者と殺人者の境界
『ヒトラーの贋札』は昨年のベルリン国際映画祭(Berlin International Film Festival)でプレミア上映され、オーストリア作品として数年ぶりに国際的な評価を得た。
印象的なシーンのひとつは、優遇されている贋作師たちが、壁を隔てた反対側で仲間の収容者の1人が射殺されたという報を聞き、楽しんでいた卓球を中止する場面だ。
カール・マルコヴィックス(Karl Markovics)演じる寡黙な主人公、サロモン・ソロヴィッチ(Salomon Sorowitsch)はそうした間も、自分の行為の結果を顧みることなく「完ぺきな」偽札作りにとりつかれていく。
一方、一団の「道徳的良心」の部分を代表する男ブルガーは、ナチスの戦争機構の一部となることを拒否し仕事を放棄するが、それによって仲間の命を危険にさらす。
ナチス親衛隊(SS)の将校は、自身の快適な地位を守るために偽ドル札完成を急がせ始める。偽札を完成させれば贋作師たちにはさらなる「保護」も保証され、善悪の境界、犠牲者と拷問者の境界はいっそうあいまいになる。
ルツォヴィツキー監督はインタビューの中で、考証役として撮影に立ち会ったブルガー氏ともうひとりの生存者がその場でもなお「偽札製造工房のSS将校は殺人者だったか、命の恩人だったか」について論じ合った様子について明かした。監督は「それこそがこの映画が語っていることだと思った」という。「現在にも通じる普遍的な問いに取り組んだ。人々が拷問され殺されてゆく強制収容所のすぐ隣の部屋で、卓球をしていて許されるのか。人々が飢えに苦しむ横で、何一つ不足ない休日を楽しんでいられるのか」
■映画人を迫害したナチスをテーマにオーストリア初のオスカー
授賞式の壇上に上がったルツォヴィツキー監督は、「ビリー・ワイルダー(Billy Wilder)監督などオーストリア出身の素晴らしい映画監督はほかにもいるが、ナチスの迫害のために国外に出た人がほとんどだった。だから、この国で初めてオスカーを取った作品が、ナチスに関することだというのはうなずける」と語った。
カール・マルコヴィックス以外の俳優陣では、存命のアドルフ・ブルガー氏役を新進のドイツ俳優アウグスト・ディール(August Diehl)、SS将校フリードリヒ・ヘルツォーク役をデーヴィット・シュトリーゾフ(Devid Striesow)が演じている。
アカデミー賞外国語映画賞でのオーストリア作品の活躍はこれまで、1986年にウォルフガング・グリュック(Wolfgang Glueck)監督の『38』がノミネートされたのみ。今年の候補作としてはほかに、イスラエル作品『ボーフォート -レバノンからの撤退-(Beaufort)-』、ポーランド作品『Katyn』、カザフスタン作品 『Mongol』がノミネートされていた。(c)AFP
ステファン・ルツォヴィツキー(Stefan Ruzowitzky)監督が手掛けた同作品は、第二次世界大戦中、ナチス(Nazis)・ドイツがベルリン(Berlin)北部のザクセンハウゼン(Sachsenhausen)強制収容所で実施した偽造紙幣製作の実話を映画化したもので、原作はこの偽札製造に2年間携わった生存者、アドルフ・ブルガー(Adolf Burger)氏の著書。過酷な環境の収容所の中でもわずかながらのぜいたくが許された特別施設で生活しながら、偽札作りを強要されるユダヤ人たちを通して「倫理」と「生存」に対する疑問を投げかけている。
139人の印刷技師や贋作師たちは、当時破綻状況にあったナチス・ドイツの作戦で敵国英国経済をかく乱させるために、偽のポンドやドル紙幣1億3100万ポンド相当分の製造を託されたのだった。
■生存と正義の葛藤、あいまいとなる犠牲者と殺人者の境界
『ヒトラーの贋札』は昨年のベルリン国際映画祭(Berlin International Film Festival)でプレミア上映され、オーストリア作品として数年ぶりに国際的な評価を得た。
印象的なシーンのひとつは、優遇されている贋作師たちが、壁を隔てた反対側で仲間の収容者の1人が射殺されたという報を聞き、楽しんでいた卓球を中止する場面だ。
カール・マルコヴィックス(Karl Markovics)演じる寡黙な主人公、サロモン・ソロヴィッチ(Salomon Sorowitsch)はそうした間も、自分の行為の結果を顧みることなく「完ぺきな」偽札作りにとりつかれていく。
一方、一団の「道徳的良心」の部分を代表する男ブルガーは、ナチスの戦争機構の一部となることを拒否し仕事を放棄するが、それによって仲間の命を危険にさらす。
ナチス親衛隊(SS)の将校は、自身の快適な地位を守るために偽ドル札完成を急がせ始める。偽札を完成させれば贋作師たちにはさらなる「保護」も保証され、善悪の境界、犠牲者と拷問者の境界はいっそうあいまいになる。
ルツォヴィツキー監督はインタビューの中で、考証役として撮影に立ち会ったブルガー氏ともうひとりの生存者がその場でもなお「偽札製造工房のSS将校は殺人者だったか、命の恩人だったか」について論じ合った様子について明かした。監督は「それこそがこの映画が語っていることだと思った」という。「現在にも通じる普遍的な問いに取り組んだ。人々が拷問され殺されてゆく強制収容所のすぐ隣の部屋で、卓球をしていて許されるのか。人々が飢えに苦しむ横で、何一つ不足ない休日を楽しんでいられるのか」
■映画人を迫害したナチスをテーマにオーストリア初のオスカー
授賞式の壇上に上がったルツォヴィツキー監督は、「ビリー・ワイルダー(Billy Wilder)監督などオーストリア出身の素晴らしい映画監督はほかにもいるが、ナチスの迫害のために国外に出た人がほとんどだった。だから、この国で初めてオスカーを取った作品が、ナチスに関することだというのはうなずける」と語った。
カール・マルコヴィックス以外の俳優陣では、存命のアドルフ・ブルガー氏役を新進のドイツ俳優アウグスト・ディール(August Diehl)、SS将校フリードリヒ・ヘルツォーク役をデーヴィット・シュトリーゾフ(Devid Striesow)が演じている。
アカデミー賞外国語映画賞でのオーストリア作品の活躍はこれまで、1986年にウォルフガング・グリュック(Wolfgang Glueck)監督の『38』がノミネートされたのみ。今年の候補作としてはほかに、イスラエル作品『ボーフォート -レバノンからの撤退-(Beaufort)-』、ポーランド作品『Katyn』、カザフスタン作品 『Mongol』がノミネートされていた。(c)AFP