【2月20日 AFP】(2月21日 写真追加)19日早朝、千葉県野島崎沖の海上で海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご(Atago)」と漁船が衝突し、漁船乗組員2人が行方不明となっている事故を受け、軍事評論家らからは自衛隊の防衛能力に警告を発する声が上がっている。

 最新鋭の装備を搭載したイージス艦の事故は、7月に北海道洞爺湖畔で開催される主要国首脳会議(G8 Summit)を前に政府が治安対策を強化する中で発生した。「あたご」は米ハワイ沖での訓練を終え、本拠地の横須賀基地へ帰港する途中、マグロはえ縄船「清徳丸」と衝突した。全長165メートルの「あたご」に対し、「清徳丸」の全長はその10分の1以下だった。

 事故発生から2日目の20日、真っ二つに割れた「清徳丸」の乗組員親子2人の捜索は、ダイバーも投入し空海の双方から行われたが、現在まで消息の手がかりはない。

■防空レーダーは最新鋭だが、航法レーダーは漁船と一緒

「あたご」は海自最大の駆逐艦のひとつで、北朝鮮がミサイルを発射した場合を想定した防衛システムの最前線として、米国が開発した最新鋭イージス誘導ミサイルを搭載している。しかし最先端の艦船の事故だけに、いっそう大きな波紋を呼び起こしている。 
 
 渡辺喜美(Yoshimi Watanabe)行政改革担当相は、「素人的に考えると、(漁船が)レーダーに映らなかったのか(と思う)。映らない場合もあるそうだが、万が一これが自爆テロの船ならどうするのか」と懸念を表明した。

 しかし、軍事評論家の熊谷直(Tadasu Kumagai)氏は、イージスシステムを搭載している船がすぐ近くの危険を捉えていると考えるのはよくある誤解だと指摘する。「(イージス艦は)防空用には高度なレーダーを搭載しているが、航法レーダーは漁船のそれとあまり変わらない」という。

 熊谷氏は、そのようなレーダーが探知できない小型舟艇による自爆攻撃はきわめて現実的な懸念だと警告する。「小さなボートは航法レーダーでは把握するのが難しい。これは問題だろう」(c)AFP/Harumi Ozawa