【2月17日 AFP】現地時間17日に独立宣言するとみられるセルビアのコソボ自治州。祝賀ムードが落ち着くとともに、住民は民族対立と破たん寸前の経済という厳しい現実に向き合うことになると専門家は指摘する。

 欧州連合(EU)支援部隊とコソボ自治州政府を待ち受けている困難を象徴しているのが、州都プリシュティナ(Pristina)から北西約20キロにあるPriluzjeだ。

 この村では、1998-99年の紛争で橋が破壊された。州の中部から北部に流れるSitnica川にかかるこの橋は、村の生活に欠かせない。しかし再建を巡って、アルバニア系住民とセルビア系住民の対立が続いている。

■消えない民族対立

 あるセルビア系住民(49)は、「われわれが自分の土地に行けないようにするため、アルバニア人が橋を破壊したのだ」と主張する。「橋が破壊されたとき、われわれの墓地は向こう岸にあった。だから川のこちら側に新しい墓地を作らなければならなかった」

 一方アルバニア系の鍵職人(51)は「セルビア人が、アルバニア人の通行を阻むためにやったんだ。彼らはわれわれと関係を持ちたくないんだ」と否定する。

 川の右岸にはセルビア系住民の住むPriluzjeが、左岸にはアルバニア系住民の村6つが点在している。

■経済の立て直しが課題

 新しく誕生する国が試されているのは、コソボの地位をめぐるアルバニア系住民とセルビア系住民の民族対立だけではない。多くの専門家が経済の持続力に疑問を投げかけている。

 現在、コソボ経済は、海外からの援助金や、ドイツなどに出稼ぎに行っているアルバニア系住民からの仕送りに支えられている。経済学者は紛争終了後からこの地域の暫定統治に当たっていた国連コソボ暫定統治機構(UNMIK)が、経済立て直しに失敗したと指摘する。

 自治州内の道路は常に整備が必要な状態にあり、1日の半分は電気が通じない。失業率は45%にも上り、200万人の人口の37%は貧困ラインを下回る生活を送っている。

 国連開発当局の住民代表は「10人中1人強が朝と夜に食事を取ることができていない」という。

 コソボの人々は、EUによるドナー国会議が開れた後に海外資本が流入し、復興が果たせると期待している。地元アナリストも、コソボが独立すれば「海外資本を獲得するだろう」と語る。

 しかし別のアナリストたちは、独立が経済危機の解決策と考えるのは欺まんだと強調する。

 地元経済学者は「独立がわれわれの生活に大量の外貨をもたらすなどという幻想は捨てなければならない。経済危機は続くだろう。鉱業や飲食業、エネルギー部門の再建には時間と資金が必要だ」と語った。

■歩み寄りが不可欠

 Priluzjeの橋問題の仲介を務める地方自治体の担当者は、アルバニア系・セルビア系双方の住民が協力して取り組まない限り、このような問題は終わらないとし、「あきらめてはいないが、当事者同士の善意がなければ解決はない」と語った。(c)AFP/Ismet Hajdari