【1月30日 MODE PRESS】「編集長」への道は、おおまかに言って二つある。出版社に入って編集の仕事を地道に積み上げる、または、関連分野でさまざまな仕事をやってその経験を買われる(または売り込む)。生駒さんは後者の代表の一人だ。アートの仕事が多かったが、「ファッションが大好き」なのは一貫していた。

■現場主義!!

 大学ではフランス語を専攻。就職して旅行雑誌の編集者をしたが、辞めてフリーのライターに。「アンアン(anan)」の仕事などがきっかけでファッションへの興味が増した。ビエンナーレやドクメンタなどアート関連の取材をしながら、ミラノやパリのコレクションを見たり、ファッションの本を読み漁ったりした。「だれにも頼まれないのに色んなところに行ってた。私は現場主義なんです」

■出産後もすぐに復帰

 現物を見て、人に会うことがエネルギーになって、文章にもなった。気に入ったアーティストの展覧会をプロデュースしたり、マネージメントまでやってしまったりしたことも。30代半ばに出産で一休みしたが、またすぐ現場に戻った。コムデギャルソン(COMME des GARCONS)の本の翻訳や三宅一生(Issey Miyake)の展覧会のカタログ作りにも手を染めた。

■タフな交渉や喧嘩も・・・

 しかし、いい企画で十分に取材できても結局ボツになってしまうことも。「メディアの外にいると書けないことが多い、と思いつめて」、ヴォーグ(VOGUE)の日本での創刊メンバーに加わった。ここでの4年間で、「国際的なファッションメディアの狩猟民族型の発想を徹底的に学んだ。タフな交渉や喧嘩も含めて」。英語も鍛えられた。

 その後、エル(ELLE)を経て、マリ・クレール(marie claire)編集長に抜擢された。

■一歩先の情報を

 「一つのメディアをまかされることの責任は大きい。自分の直感を大事にしたいが、それをチームとどうチューニングしていけるか。内容が勝負だが、その前にメディアの責任ということも常に考えています」。誌面では、時代の状況を敏感に先取りして社会、女性のさまざまな問題に取り組んだ企画特集も目立つ。「今の女性は服だけ考えてはいない。一歩ぐらい先の情報を提供しようと努めています」

■365日24時間の仕事

 編集者として必要なことは、「まず行動力。腰が重いひとには向かない。そして、探求心。色々なものに好奇心をもって、どうしてなのか?と掘り下げる気持ちが大事です」。それともう一つ欠かせないのは「多くの人とネットワークを作れること」だという。

 土、日曜日はなるべく休む。しかし、アートの展覧会などカルチャー関連のイベントに出かけることが多い。「好きだからいいんですけれど、仕事と結局地続きなんです。そういう意味では、編集長というのは365日24時間の仕事ですね」(c)MODE PRESS