【1月30日 AFP】「アンネの日記」に登場する、オランダのアムステルダム(Amsterdam)にあるクリの木の伐採計画が、地元住民らの強い反対により撤回された。市当局が23日、明らかにした。

 このクリの木は、アンネの一家が2年近くナチスの迫害を逃れて隠れ住んでいた家の窓から眺めていたもので、当時を書きつづった日記の中に登場する。

 1944年2月23日付けの日記には、この木について次のような記述がある。「わたしたち2人は青空、露にぬれて輝く落葉したクリの木、勢いよく羽ばたいて銀色に輝くカモメや鳥たちを眺めた。感動してうっとりしたわたしたちは話すことすらできなかった」

 市当局、安全面の理由から木の伐採を望む所有者、木の保存を訴える環境保護論者、そして地元住民を巻き込んだ法廷闘争は前週ようやく決着がつき、伐採中止で合意した。


 クリの木の保存を推進する団体Support Anne Frank Tree Foundationの代表を務めるオランダ人エコノミスト、Arnold Heertje氏は「21日に合意書に署名した。本当にうれしい。これはどこにでもある木ではなく、アンネ・フランク(Anne Frank)の歴史とユダヤ人迫害の歴史の一部なのだ」と喜びを語った。

 市当局は、この樹齢150年の木の管理を引き継ぐことも認めている。

 アンネが隠れ住んでいた家の裏庭に立つクリの木は重さ30トン。深刻なカビの被害を受けており、倒壊する恐れがあるとされていた。Heertje氏によると、3月末までにスチール製の支柱を設置しなければならず、設置費用が約5万ユーロ(約800万円)、今年必要な維持費が約2万ユーロ(約320万円)、来年以降の維持費が毎年1万ユーロ(約160万円)掛るという。これにより木は5年から10年延命が見込まれているという。

 木の所有者は約1年前に伐採許可を申請。前年11月に伐採が予定されていたが、支援団体などの反対活動により、直前になって伐採の延期命令が下った。

 現在は博物館になっているかつての隠れ家を運営するアンネ・フランク財団(Anne Frank Foundation)は、当初は木の伐採に賛成してた。同財団のMaartje Mostart氏はAFPに対し、「博物館の安全が一番の関心事だ。現在の木を伐採して同じように見える別の木を植える案が実現すればもっと良かったが、現在の解決策には満足している」と語った。

 Heertje氏によると、10年以内に木が倒壊した場合に備え、この木から取った苗木の飼育が行われているという。(c)AFP/Stephanie van den Berg