【1月24日 AFP】最近の若い役者はテレビでの演技に慣れてしまい、つぶやくような声しか出せず、劇場の観客にはその声を聞き取ることができないほどだ――。英国の著名舞台監督、ベテラン舞台俳優らが若い世代の俳優らのこうした問題に対し批判の声をあげている。

 王立シェイクスピア劇団(Royal Shakespeare Company)の創設者ピーター・ホール(Peter Hall、77)氏もその1人だ。同氏は22日発行のタイムズ(Times)紙に掲載された記事の中で、若い役者は舞台よりもテレビでデビューすることが多くなり、「現実」らしくするためにつぶやき声になっていると指摘している。。

「40歳以下のほとんどの役者は、聞き取れる声を出すのに苦労している。舞台監督の多くが同じ事を言う。役者は大きな声を出せば、『非現実』になると思っているようだ。わたしだったらこう言うだろう。『君たちがやっていることは非現実なんだ。誰かの衣装をまとい、誰かの言葉を話しているのだ』とね」

 タイムズ紙の批評家ベネディクト・ナイチンゲール(Benedict Nightingale)氏は、舞台での口調を改善すべき人物としてユアン・マクレガー(Ewan McGregor)を挙げている。2007年には、劇作家のアラン・エイクボーン(Alan Ayckbourn)氏が、ロンドン(London)の舞台に出演するハリウッド(Hollywood)のスターたちが、英国の演劇を台無しにしていると語っていた。同氏によれば、そういったスターたちは、舞台の演技もできず、才能のある新人たちを締め出し、舞台ファンを幻滅させているという。

 ベテランの役者たちもこの意見に賛同している。『ジャッカルの日(The Day of the Jackal)』(1973年)などに主演した英国屈指の名優エドワード・フォックス(Edward Fox、70)は、若い役者は、静かな演技の方が現実的だと勘違いしていると語る。「彼らは自分がうまいと思っている。誰かがその誤解を解かねばならない。観客は、彼らが言っている言葉を聞き取りたいのだ」

 現在英国有数の実力派俳優トム・コートネイ(Tom Courtenay)も、セリフを聞き取るのに苦労すると嘆く。「若い二枚目の役者の中には、自分が出演して格好良くしていればいいと思っている者もいるようだ」

 著名劇作家のアーノルド・ウェスカー(Arnold Wesker)も、「いいかげんに誰かがちゃんとこのことを言うべきだ。テレビでも映画でも役者はつぶやいている。現実らしく見せるためにやっているのだろうが、演劇は現実ではない」と語っている。(c)AFP