【1月16日 AFP】リトアニアで、職場に向かおうとトラックをヒッチハイクした女性が、眠っている間に隣国ラトビアを越えて500キロ先のエストニアまで運ばれるという事件が起きた。エストニア警察が15日、明らかにした。

 Jolantaさんという名前しか明らかにされていないこの女性(33)は、バルト諸国に展開するスーパーマーケットチェーン「マキシマ(Maxima)」の清掃係。Jolantaさんは14日、自宅から125キロ離れたカウナス(Kaunas)にある職場に向かおうと、通りがかったトラックをヒッチハイクした。

 しかし、Jolantaさんがリトアニア語で頼んだ行く先は、ロシア語しか話せない運転手には上手く伝わらなかったようで、トラックの運転手はJolantaさんをカウナスの職場で下ろす代わりに、500キロ離れたエストニア南部の都市タルトゥ(Tartu)まで運んでしまった。

 Jolantaさんはヒッチハイクした後、車内で寝てしまいタルトゥに着くまで気付かなかったという。途中、トラックはリトアニアを出国し、ラトビア・エストニア間の国境も通過したが、この3国は欧州連合(EU)域内の加盟国間の自由な人の移動を促す「シェンゲン(Schengen)協定」に加盟しており、国境通過に際し何の手続きも必要なかったことがあだになった。

 タルトゥ警察の報道官によると、Jolantaさんはエストニアの「マキシマ」前で目を覚まし、職場に着いたと勘違いし店内に入っていったという。その後、「マキシマ」の警備員から警察に不審な女性がいるとの通報があり、Jolantaさんを保護したという。警察はタルトゥにあるリトアニア領事館に問い合わせ、事件の概要が明らかになった。

 現在24か国が加盟しているシェンゲン協定では、加盟国間での出入国検査が撤廃されている。Jolantaさんも同協定が施行される前年12月21日以前であれば、リトアニアとラトビアの国境で出入国検査を受けるために起こされ、カウナスから180キロ程度の「被害」ですむはずだった。(c)AFP